イーサリアムL1・L2間の同期処理フレームワーク「EEZ」構想を提示

L2とメインネットを単一トランザクションで接続する枠組み

イーサリアム(Ethereum)のレイヤー2(L2)間およびメインネット(L1)との処理を、単一トランザクションで実行可能にする新たなフレームワーク「イーサリアム・エコノミック・ゾーン(Ethereum Economic Zone:EEZ)」が示された。同構想は、ノーシス(Gnosis)の共同創業者フリーデリケ・エルンスト(Friederike Ernst)氏と、ジスク(Zisk)創業者ジョルディ・ベイリナ(Jordi Baylina)氏が主導する構想で3月29日に公式ブログで発表した。また、同構想は3月31日にフランス・カンヌで開催された「EthCC」で言及されたと、複数の海外メディアが報じている。

EEZは、イーサリアム財団の資金提供を受けて開発されている。同フレームワークはイーサリアムのメインネットおよび接続されたL2同士が、同一トランザクション内で同期的にコンポーザブルとなるロールアップ向けに設計されている。これにより、あるL2上のスマートコントラクトが、メインネットや他のL2のコントラクトを呼び出し、その結果を同一トランザクション内で利用できるとのこと。

また同フレームワークでは、イーサリアムのネイティブトークンであるETHがガストークンとして利用され、追加のブリッジインフラを必要としない設計が採用されているとのこと。

今回の構想は、L2の増加に伴い顕在化している分断の課題への対応として位置付けられる。各L2が独自の流動性やブリッジ、ウォレット統合を持つことで、ユーザー体験や資本が分散される構造となっている。さらに、L2の一部ではトランザクションの処理を単一主体が担う「シーケンサー(sequencer)」の中央集権性や、手数料収益がイーサリアム本体に還元されにくい点も課題として指摘されている。

なお、イーサリアム財団(Ethereum Foundation)は3月23日、イーサリアムメインネットとL2の役割に関する新たな見解を公式ブログで示している。このブログでは、イーサリアムが「一体的なシステムとしてスケールする」ことを目標に掲げ、L1とL2の役割分担が整理された。

同見解では、L1は決済完了(settlement)、共有状態、流動性の中核として機能する一方、L2は差別化された機能やサービス、GTM(Go-to-market)戦略などを担う存在と位置付けられている。また、L2は一律の存在ではなく、多様な特性を持つ「フルスペクトラム」として捉えるべきとのこと。イーサリアム財団がこのような方針を示したことで今後のイーサリアムエコシステムは、強固なL1基盤の上に、独立しつつ相互運用可能なL2が並立する構造を目指していく可能性がある。

EEZはこの流れの中で、複数チェーン間の処理を同期的に統合し、共通インフラ上での実行環境を提供する。これにより「単一のイーサリアム」に近い利用体験の実現が目指されている。

また同構想は「EEZアライアンス(EEZ Alliance)」と呼ばれる枠組みのもとで推進されており、分散型金融(DeFi)プロトコルのアーベ(Aave)や、実世界資産(RWA)プラットフォームのセントリフュージ(Centrifuge)、トークン化株式プロジェクトのxストックス(xStocks)などが初期メンバーとして参加している。

なお、L2間の相互運用性をめぐっては、オプティミズム(Optimism)の「スーパーチェーン(Superchain)」やポリゴン(Polygon)の「アグレイヤー(AggLayer)」、イーサリアム財団による「インターオペラビリティ・レイヤー(Interop Layer)」など複数の取り組みが進められている。こうした中でEEZは、単一トランザクション内での同期的なコンポーザビリティを特徴とする。

EEZはスイス拠点のEEZアソシエーション(EEZ Association)として新設されており、ソフトウェアはオープンソースで公開される見込みだ。今後、技術仕様やベンチマークなどの詳細が数週間以内に示されるとのことだ。

参考:EEZ ザ・ブロック
画像:iStocks/Peach_iStock

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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