イーサリアム財団、L2間の相互運用性強化に向けた包括的フレームワーク発表

イーサリアム財団がシームレスなL2体験実現へ

イーサリアム財団(Ethereum Foundation)が、レイヤー2(L2)ネットワーク間の相互運用性を強化し「1つのチェーンのような体験」を提供するための包括的なプロトコル更新を8月29日に発表した。同計画は「初期化(Initialisation)」、「加速化(Acceleration)」、「最終化(Finalisation)」の3つのストリームに分かれている。

「初期化」ストリームでは、ユーザーが望む結果を高水準で表現できるインテント(Intent)ベースのアーキテクチャを中心とした「オープンインテンツフレームワーク(Open Intents Framework:OIF)」を導入する。同フレームワークは、アクロス(Across)、アービトラム(Arbitrum)、ハイパーレーン(Hyperlane)、LI.FI、オープンゼッペリン(OpenZeppelin)などの協力により開発されている。

また同ストリームには、検閲耐性とプライバシーを維持しながらトラストレスなクロスL2取引を可能にする「イーサリアム相互運用性レイヤー(Ethereum Interoperability Layer:EIL)」も含まれる。EILはERC-4337プロトコルの開発チームが主導しており、10月にドキュメントが公開される予定だ。

「加速化」ストリームでは、L1(レイヤー1)の確認時間を大幅に短縮する取り組みが進められる。現在13~19分かかるファイナリティを待つ代わりに、15~30秒で強固な確認を得られる「高速L1確認ルール(Fast L1 Confirmation Rule)」の実装が、2026年第1四半期に全コンセンサスクライアントで利用可能になる予定だ。

さらに、L1のスロット時間を現在の12秒から6秒に短縮する研究も進行中で、これによりインクルージョン時間、確認時間、ファイナリティ時間がそれぞれ半減する。オプティミスティックロールアップの決済時間短縮についても、ZK(ゼロ知識証明)ベースのリアルタイム証明や安全な「2-of-3」メカニズムの採用を支援する。

「最終化」ストリームでは、リアルタイム証明技術と高速ファイナリティの実現に向けた研究開発を推進する。SNARK(zk-SNARK)技術の活用により、クロスチェーンメッセージパッシングの高速化と、ファイナリティ時間の秒単位への短縮を目指している。

今回の発表には、セキュリティ向上を目指す「Trillion Dollar Security」プログラムのフェーズ2や、イーサリアム共同創設者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏らが主導するプライバシーウォレット「Kohaku」プロジェクトも含まれている。

なお、イーサリアムでは現在史上最大規模のバリデーター離脱が発生しており、100万ETH超(約50億ドル相当)がステーキング解除待機中となっている。退出待機時間は過去最長の18日16時間に延びているものの、機関投資家からの強い需要により市場への大きな影響は限定的とみられている。

参考:イーサリアム財団ブログ
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

田村聖次

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
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