サーキュラーとロックテック、ブロックチェーンでEV電池「リチウム」のトレーサビリティ保証

サーキュラーがロックテックと提携でリチウムのサプライチェーン透明化

ブロックチェーン・トレーサビリティ・スタートアップのサーキュラー(Circulor)が、カナダのクリーンテック企業であるロックテックリチウム(Rock Tech Lithium)と提携したことが3月16日分かった。

ロックテックがドイツで設立を予定している、欧州初のバッテリー向け水酸化リチウムの製造工場において、サプライチェーントレーサビリティおよびバッテリーリサイクルのためのトレーサビリティ、CO2の追跡について、サーキュラーのブロックチェーンを活用したトレーサビリティプラットフォームを利用するとのことだ。

今後数十年間で自動車メーカーは、電気自動車の生産量を劇的に増加させることを計画しており、それに伴い、リチウムイオンバッテリーの主要コンポーネントであるリチウムの需要が増大しているという。ロックテックの新工場では、電気自動車50万台分のバッテリーに相当する年間24,000トンの水酸化リチウムが生産される予定とのこと。

今回のトレーサビリティプラットフォームの導入は、早ければ2024年に施行されるEU(欧州連合)の電池規制に先駆けて対応するために行われるとのことだ。

同工場で利用されるリチウム鉱石は、ロックテックがカナダのオンタリオ州ジョージア湖周辺に所有する採鉱地から調達する予定。トレーサビリティプラットフォームにより採石地や精製過程を保証・記録する他、生産に伴う環境負荷を抑えるために、欧州最大の応用研究機関であるフラウンホーファー研究機構の環境・安全・エネルギー技術研究所(Fraunhofer UMSICHT)によるリチウム生産プロセスのライフサイクル評価(LCA)も実施されるとのことだ。

同研究所の環境・資源部門長であるイルカ・ガーキー(Ilka Gehrke)博士は「データの広範な収集と分析により、ロックテックは水酸化リチウムの生産をより持続可能にするだけでなく、その後のプロセスの最適化を、エネルギーと環境に最も優しい方法で実施できるよう支援します」と述べている。

また廃棄バッテリーからのリサイクルによるリチウムのクローズドループ(使用済みの製品から使える部分を取り出し、再利用する循環型の生産システム)の構築のためにも、プラットフォームは利用されるとのこと。

現在、世界でリサイクルされている電池用リチウムはわずか1%で、2030年までにロックテックは原材料の50%をリサイクル電池から調達することを目指しているとのこと。これによりロックテックは欧州初の水酸化リチウムのクローズドループサプライヤーとなることを目標としている。

「持続可能で強靭な原材料のサプライチェーンは、当社の自動車業界のお客様にとってますます重要になってきています。ロックテックと協力して、原産地を明確に証明し、CO2排出量を組み込んだ製品を提供できることを誇りに思っていま」とサーキュラーのCEO兼創設者であるダグラス・ジョンソン-ポエンスゲン(Douglas Johnson-Poensgen)氏は述べている。

サーキュラーについて

サーキュラーは、企業向けにブロックチェーンを活用したトレーサビリティプラットフォームを提供する企業。サプライチェーンを完全に分析、追跡、管理をすることで企業の「責任ある調達」の支援を行っている。またそれにより構築された信頼性の高い原材料の管理チェーンに対し、持続可能性やその他のESGデータを添付できるとしている。

昨年サーキュラーは、自動車メーカーVOLVO(ボルボ)のEVブランド車の開発を行っている企業と提携し、バッテリーに使用される鉱物とCO2の追跡を行なっている。

また蓄電池などに利用される鉱物であるグラファイト(石ぼく)の加工メーカーと提携し、グラファイトがEVへ搭載されるまでのバッテリーサプライチェーンのトレーサビリティを保証している。

サーキュラーはその他にも、ジャガーランドローバー、BHP、ボーイングなどにもトレーサビリティプラットフォームを提供している。

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参考:サーキュラー
デザイン:一本寿和
images:iStocks/Black_Kira・artacet

この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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