バイナンスUS、約1,735億円のボイジャー買収計画を取りやめる

規制の不確実性を理由に

バイナンスUS(Binance.US)は、「敵対的で不透明な規制環境」を理由に、破産した暗号資産(仮想通貨)レンディング企業ボイジャーデジタル(Voyager Digital)の資産を購入するための13億ドル(約1,735.6億円)の取引を中止した。

ボイジャーの弁護士が4月25日に裁判所へ提出した書類によれば、バイナンスUSは、同社がボイジャーに対し支払った保証金1000万ドル(約13.3億円)と、支払うべきリバース・ターミネーション・フィー(M&A取引が特定の理由で予定通り実行されなかった場合に、買主から売主に支払われる解約金)に関し、全ての権利を保留すると述べている。

バイナンスUSの広報担当者は声明にて「米国における敵対的で不確実な規制環境は、米国のビジネスコミュニティ全体に影響を与える予測不可能な事業環境を導入しました」と述べ、「私たちは、顧客がデジタル資産経済に参加することができる安全なプラットフォームの構築に注力しています」と続けた。

この動きは、倒産後、債権者への返済のために資産売却による資金調達を目指していたボイジャーにとって、新たなハードルとなる。同社は当初、大手暗号資産取引所のFTXへ資産売却することで合意していたが、昨年11月に起きたFTXの破綻により、この取引は決裂した。

その後、バイナンスUSがボイジャーの買収提案に参入したが、この買収は規制当局の反対で雲行きが怪しくなった。先月、連邦破産裁判所はこの買収提案の取引完了を一時的に停止し、米国政府が異議申し立てを行う時間を増やしている。

ボイジャーは、バイナンスUSの資産売買契約の終了後、ボイジャーのプラットフォームを通じて暗号資産と現金を顧客に直接返却するオプションの行使を進めると述べた。

委員会は信じられないほど失望

なおボイジャー事件の無担保債権者公式委員会は、バイナンスのこの動きに「信じられないほど失望した」と述べ、法的措置を取る可能性もあるという。

同委員会は自身のツイッターで「委員会はこの決定に信じられないほど失望しており、Binance.USに対する請求の可能性を調査している」とツイート。「その間に、委員会とボイジャーは、自己清算を直ちに進めるために、プランに基づくトグルオプションを速やかに行使することに集中している」と続けた。

関連ニュース

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Binance.US calls off $1.3 billion deal for Voyager’s assets By Niket Nishant and Hannah Lang
翻訳:髙橋知里(あたらしい経済)
images:Reuters

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

合わせて読みたい記事

【3/17話題】OmakaseとビットポイントがBabylonでビットコインステーキングへ、テレグラム創設者が仏出国かなど(音声ニュース)

ブロックチェーン・仮想通貨(暗号資産)・フィンテックについてのニュース解説を「あたらしい経済」編集部が、平日毎日ポッドキャストでお届けします。Apple Podcast、Spotify、Voicyなどで配信中。ぜひとも各サービスでチャンネルをフォロー(購読登録)して、日々の情報収集にお役立てください。

Sponsored

米コインベース、カルダノ(ADA)と天然ガス(NGS)の先物提供をCFTCに申請

米大手暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース(Coinbase)傘下のデリバティブ部門「コインベースデリバティブズ(Coinbase Derivatives)」が、暗号資産カルダノ(ADA)および天然ガス(NGS)の先物取引提供に向けた自己証明書(Self-Certification)を米商品先物取引委員会(CFTC)に申請した。コインベースが3月14日にXで発表した

ブラックロックのトークン化ファンド「BUIDL」、運用資産額が10億ドル突破

「ブラックロック・米ドル機関投資家向けデジタル流動性ファンド(BlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fund:BUIDL)」 の運用資産額が10億ドル(約1,488億円)を突破した。同ファンドのトークン化を担当しているデジタル資産発行プラットフォーム運営のセキュリタイズ(Securitize)が3月14に発表した

NRI・野村證券・BOOSTRYら、国内初の「デジタル債のDVP決済」と「デジタル通貨での証券決済」を実証

野村総合研究所(NRI)、野村證券およびBOOSTRY(ブーストリー)、ディーカレットDCP、三井住友銀行の5社が、「新たな決済スキームを利用したデジタル債の新規発行」および「デジタル通貨を利用した証券決済の概念実証(PoC)」に関して協業したことを3月14日に発表した