米財務省、暗号資産ミキシングをマネロン懸念の取引区分に指定

国家安保上の脅威

米財務省は、国際的な暗号資産(仮想通貨)ミキシング(CVC mixing)を、マネーロンダリングが懸念される主要な取引類型として指定する姿勢だ。米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)が、規則作成提案公告(NPRM)として10月19日発表した。

今回の措置は、ハマスを含むテロリスト集団が暗号資産ミキサーを使用していることを受けてのことだという。

ミキシングとは、複数ユーザーの暗号資産(仮想通貨)の取引を混ぜ合わせることで、利用者の取引履歴を匿名化する技術のことだ。そもそも利用者のプライバシーや匿名性を維持するために活用されるために開発された。しかし、その特性がサイバー犯罪に関与した資産のロンダリングに利用されていることが問題視されている。なおミキシングサービス「トルネードキャッシュ(Tornado Cash)」の開発者が、同サービスを介して北朝鮮のハッカーによる暗号資産のマネーロンダリングに加担していたとして、昨年8月に逮捕されている。

発表にてウォーリー・アデイモ(Wally Adeyemo)財務副長官は「本日の措置は、国家系サイバー・アクター、サイバー犯罪者、テロリスト集団など、広範な不法行為者に暗号資産混合取引(ミキシング)への悪用と闘うという財務省の決意を強調するものだ」とし、「財務省はより広範な意味で、ハマスやパレスチナ・イスラム聖戦を含むテロリスト集団によるCVCエコシステムのあらゆる側面の不正使用と積極的に闘っている」と述べている。

またNPRMでは、対象となる金融機関に対し、米国内または米国外の司法管轄区が関与するミキシングが判明もしくは疑われる場合、取引情報を報告することを義務付けるとのことだ。

クリプト慎重派の懸念

クリプト(ブロックチェーン・暗号資産の総称)に慎重な姿勢で知られる民主党エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員と共和党ロジャー・マーシャル(roger marshall)上院議員は10月18日、ウォールストリートジャーナルへ寄稿を寄せた。

その寄稿にて2人は、「分散型金融企業」は銀行と同じマネーロンダリング防止規則に従うべきとの見解を示した。

ウォーレン氏は10月17日にも、民主・共和両党を含む100人以上の議員とともにバイデン政権へ書簡を送っており、ハマスが暗号資産を通じて数百万ドルを調達したことについて懸念を示していた。

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参考:金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN) WSJ
デザイン:一本寿和
images:iStocks/rarrarorro

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髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
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