英規制当局、ソーシャルメディアでの暗号資産プロモーションガイダンス提案、インフルエンサーも規制対象に

インフルエンサーやミームも規制対象に

イギリスの規制当局である金融行為監督機構(FCA)が、暗号資産(仮想通貨)企業及びインフルエンサーに対し、新たなソーシャルメディア・ガイダンスを7月17日発表した。

FCAは7月4日、暗号資産を英国ユーザーに販売する企業に対し、10月8日から発効される金融プロモーション規制制度を遵守しなければ刑事告訴される可能性もあると警告。これを破った場合、2000年金融サービス市場法(FSMA)第21条に違反することになり、最高2年の禁固刑、無制限の罰金、またはその両方で処罰されるとのことであった。なお対象範囲は国内企業にとどまらず、海外企業も含まれる。

今回発表されたガイダンスによれば、ソーシャルメディア・インフルエンサーも金融プロモーション規制制度の対象となるという。

インフルエンサーが、FCA認可者として承認を得ずに規制対象の金融商品やサービスを宣伝すること、もしくはFCA認可を得ずに金融アドバイスを提供することは、犯罪行為となる可能性があるとのことだ。

また、たとえ無報酬でプロモーションを行っていたとしても、後に雇われることを期待したり、より多くの閲覧数を獲得するために投稿している場合は、報酬を得てプロモーションを行うインフルエンサーと同様、金融プロモーション規制制度の範疇になるという。

また、ミーム(インターネット上で拡散されるコンテンツや行動)も金融プロモーション規制制度の対象となるという。なお公開・招待型プラットフォームのどちらであっても対象となるとのことだ。

若年層への影響を指摘

ガイダンス内でFCAは、金融商品を宣伝するインフルエンサーである「フィンフルエンサー」の台頭を指摘している。ガイダンスによると18歳から29歳の62%がソーシャルメディアのインフルエンサーをフォローしており、74%が彼らのアドバイスを信頼していると答えたという。その結果、若年層のフォロワーの10人に9人が金融行動を変えるように促されているとのことだ。

またFCAは、インフルエンサーが自身の宣伝する商品についてほどんど知識がない場合が多いことも指摘。専門知識の欠如は、違法・非準拠のプロモーションの多さに反映されており、消費者が質の低い情報を目にする可能性を高めていると非難した。

このほかにもFCAは、パンデミック以降、リスクの高い投資商品に投資したことがある40歳未満の58%が、投資背景にソーシャルメディアでの過大広告やニュースなどを挙げたことを指摘している。

また2022年の第4四半期には、認可企業のウェブサイト及びソーシャルメディアの金融プロモーションの69%がFCAの介入を受けて修正または撤回されたという。

FCAは7月17日のツイートにて「英国全土で、あまりにも多くの人々が不適切な情報源から金融宣伝を見せられています。私たちは、違法な金融宣伝、特にソーシャルメディア上で見受けられるものを根絶するため、活動を強化していきます」と述べている。

FCAは、このガイダンスに関するコメントを9月11日まで募集している。

なおFCAでは今年10月8日より、「友達紹介」ボーナスなどの暗号資産への投資インセンティブを禁止することが決まっている。また同時期より企業は、初心者の投資家に対し、投資決定を検討する時間を与えるため、明確なリスク警告と 24 時間のクーリングオフ期間を導入する必要があるとしている。なおこの措置は、他のハイリスク投資に対して導入されている制度と同様とのことだ。

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    参考:FCAガイダンス
    デザイン:一本寿和
    images:Reuters

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    髙橋知里

    「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
    同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
    同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

    「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
    同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
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