MARA、15億ドル規模のビットコイン売却。AIデータセンターへ本格転換

インフラ企業への転換鮮明に

ビットコイン(BTC)のマイニング事業を主軸とするマラ・ホールディングス(MARA Holdings)が、2026年第1四半期に約15億ドル(約2365億円)相当のビットコインを売却し、従来の「保有重視」戦略から大きく方向転換した。マラは5月11日、四半期報告書(Form 10-Q)を米証券取引委員会(SEC)に提出し、電力インフラおよびAIデータセンター事業への本格的な方針転換を改めて示した。

マラの2026年第1四半期の売上高は1億7,460万ドル(約275億円)で、前年同期比18%の減収。純損失は約12.6億ドル(約1987億円)に達した。同社は主因として、期間中のビットコイン価格下落に伴い、デジタル資産の公正価値が約10億ドル(約1577億円)減少したことを挙げている。

10-Qのバランスシートからも戦略転換が確認できる。総資産は2025年末の72.9億ドル(約1兆1,500億円)から49.5億ドル(約7806億円)へ減少。うち非流動デジタル資産は33.7億ドル(約5314億円)から17.3億ドル(約2728億円)へ大幅に縮小した。一方、短期借入金(クレジットライン)は3.5億ドル(約552億円)から1.5億ドル(約236億円)へ圧縮されており、ビットコイン売却資金を活用した有利子負債削減が進んだことがうかがえる。

マラは同四半期に合計2万880BTCを売却。うち1万5,133BTC、約11億ドル(約1735億円)相当は期末近くに売却され、転換社債の買い戻しに充当された。

この結果、四半期末のビットコイン保有残高は3万5,303BTCとなり、2025年末の5万3,822BTCから約1万8,500BTC減少した。ビットコイントレジャリーズ(Bitcoin Treasuries)のデータによれば、この売却により同社の上場企業ビットコイン保有ランキングは低下した。

経営陣はこの動きについて、ビットコインを「手放せない聖域」ではなく、バランスシート上の「弾薬(ammunition)」として機動的に活用するものだと説明している。

一方でマイニング自体の運用成績は堅調で、同四半期の採掘量は2,247BTCに上り、稼働中のハッシュレートも前年比33%増の72.2EH/s(エクサハッシュ毎秒)まで拡大した。ただし、これらの成果も保有BTCの評価損を補うには至らなかった。

マラは決算説明で、新たな特定用途向け集積回路(ASIC)マイナーの大規模購入は予定していないと明言した。前サイクルで多くのマイナーがハッシュレート拡大競争に資本を投じた戦略とは対照的な姿勢となる。

代わりに経営資源を振り向けているのが、ビットコインマイニングと高性能コンピューティング(HPC)の双方に対応可能な電力・データインフラだ。

その象徴的な取り組みが、オハイオ州ハンニバルの天然ガス火力発電データインフラ用地の「ロング・リッジ・エナジー&パワー(Long Ridge Energy & Power)キャンパス」だ。マラは約15億ドル(約2365億円)での取得契約を締結しており、10-Qでは2026年4月29日付の後発事象として記載されている。同キャンパスには最大505MW規模のガス火力発電能力と拡張用地が含まれ、段階的な整備を経て600MW超のAI・クリティカルITワークロードへの対応を見込む。既存のマイニング設備も統合される予定だ。

また10-Qには、2026年2月に欧州のクラウド・HPC企業のエクサイオン(Exaion SAS)を買収したことも記載されており、グローバルなデータインフラ展開の布石とみられる。のれんとして9,050万ドルが計上され、顧客関係や技術資産なども無形資産として認識されている。

さらに、米国の大手オルタナティブ投資会社のスターウッド・キャピタル・グループ(Starwood Capital Group)との提携により、一部のマイニングサイトをAI・HPCデータセンターへ転換する計画も進行中だ。ブロック報酬に依存しない収益源の多様化を進める。同社の開示によれば、自社運営マイニング設備の約90%が最終的にAIおよびITインフラ用途へ転用可能な構成になるという。

今回の一連の動きは、マラをビットコインマイニングとAIコンピューティングという、電力消費の大きい2つの成長分野に同時に軸足を置く企業へと再定義するものだ。市場環境に応じて電力配分を柔軟に切り替えることで、収益最大化を狙う。

同社は引き続きビットコインのマイニングおよび保有を継続しながら、インフラ企業としての側面を強化する方針を示している。

参考:発表
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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