アプトスラボ、MEV対策で「暗号化メモリプール」提案。イーサリアムでも研究が進む領域

アプトスがネイティブな暗号化メモリプール提案

レイヤー1ブロックチェーン「アプトス(Aptos)」の開発を行うアプトスラボ(Aptos Labs)が、同チェーン向けの「暗号化メモリプール(Encrypted Mempool)」を5月12日に発表した。同機能は現在、「AIP-144」として提案されており、議論が進められている段階だ。

アプトスラボによると、もし今後同提案がガバナンス承認されれば、アプトスはネイティブな暗号化メモリプール経由でトランザクションを送信できる初のレイヤー1ブロックチェーンになるという。

暗号化メモリプールは、ブロックの順序付けが行われる間はトランザクション内容を暗号化して秘匿して、実行直前に開示する仕組みだ。アプトスラボによると、ユーザーはワンクリックで暗号化されたトランザクションを送信でき、フロントランニングやオーダーフローの漏洩から保護される。また、速度や性能、オンチェーン上の透明性には影響を与えないとしている。

現在の多くのブロックチェーンでは、トランザクションはブロックへ記録される前に、メモリプールと呼ばれる一時的な待機領域へ送信される。この間、保留中のトランザクション内容はバリデーターなどから見える状態となる。

アプトスラボは、こうした実行前の取引情報の可視性がオンチェーン取引の利点である一方、最大抽出可能価値(MEV)に関連する課題につながっていると説明している。

例えば、大口注文などの内容が事前に見えることで、他の参加者が先回り取引を行う「フロントランニング(Front-running)」を実行する余地が生まれる。また、特定の注文の前後へ別の取引を挟み込む「サンドイッチ攻撃(Sandwich Attack)」なども知られている。こうした行為は、オーダーフローを監視する術を持つ一部市場参加者には利益機会となる一方、多くの一般ユーザーには不利な価格での取引や追加コストをもたらす可能性がある。

アプトスラボによると、暗号化メモリプールでは、トランザクションの詳細はブロックの順序付け中も秘匿され、実行直前にのみ開示されるという。これにより、同社はユーザーの取引意図をフロントランニング、検閲、オーダーフロー操作から保護する狙いだ。

この機能を実現するため、アプトスラボの研究チームは、新たなバッチ型しきい値暗号方式を開発した。これにより、バリデーターは複数の暗号化トランザクションをまとめて共同復号できるようになるという。

アプトスラボによると、この方式により、通信および計算オーバーヘッドを大幅に削減できる。また、オンライン処理はバッチごとに20ミリ秒未満に抑えられるとのこと。

さらに、このシステムはアプトスのコンセンサスプロトコルへ直接統合される。ユーザーはボタンを切り替えるだけで暗号化メモリプールへトランザクションを送信できるようになるという。

同社は、DEXの現物取引高が2025年に月間2,000億ドル(約31.5兆円)を超える規模へ成長する中で、実行前の取引情報の可視性がMEV関連の課題につながっていると説明している。そのうえで、暗号化メモリプールについて、大規模な価値移転を検閲やフロントランニングを恐れず行うための前提条件になるとの考えを示した。

イーサリアムでもMEV対策の研究が進む

こうしたMEVやフロントランニングを巡る課題は、アプトス固有のものではない。

イーサリアム(Ethereum)特化の研究機関ニックス・ファウンデーション(Nyx Foundation)が今年2月に公開した研究論文では、DEX「ユニスワップv3(Uniswap v3)」におけるJIT(Just In Time)取引の一部が、公開メモリプールを経由しない「プライベートルート」で実行されていたことが報告されている。同研究では、こうした構造が市場参加者間の情報格差や競争環境に影響を与えている可能性があると整理している。

また、イーサリアム共同創設者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏も今年3月、自身のXアカウントにてMEVやブロックビルディングを巡る課題について説明している。同氏はその中で、「トキシックMEV(toxic MEV)」対策として、「暗号化メモリプール(Encrypted Mempool)」研究が進められていることにも言及した。トキシックMEVとは、ユーザーの取引内容が実行前に見えることを利用し、先回り取引や取引順序の操作によって一部市場参加者が利益を得る行為を指すとみられる。

イーサリアムコミュニティでは以前から、こうした問題への対策研究が進められている。例えば、MEV対策インフラを開発するフラッシュボッツ(Flashbots)は、公開メモリプールを経由せずに取引を送信する「プライベートメンプール」や、暗号化されたオーダーフロー処理などを研究している。さらに、イーサリアム研究圏では、複数バリデーターによる共同復号を行う「しきい値暗号(threshold encryption)」を活用した暗号化メンプール研究も進められている。

アプトスラボが今回提案した仕組みも、こうしたMEV対策研究の流れと関連するものとみられる。

参考:アプトスギットハブフラッシュボッツフラッシュボッツフォーラム
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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