Aptos LabsとJump Crypto、高性能ホットストレージ「Shelby」を発表

クラウドに代わるWeb3インフラ構築目指す

アプトスネットワーク(Aptos Network)を開発するアプトスラボ(Aptos Labs)とブロックチェーンインフラ企業のジャンプ・クリプト(Jump Crypto)が、分散型ホットストレージネットワーク「Shelby(シェルビー)」を6月24日に発表した。

発表によると、「Shelby」はパフォーマンス、コスト、分散性のすべてを備えたホットストレージレイヤーであり、アプトスの高スループット技術を基盤に構築されたグローバルな分散型ストレージネットワークとなる。

これまでの分散型ストレージが「コールドストレージ(静的保存)」に最適化されていたのに対し、「Shelby」はサブセカンド(1秒未満)のレスポンスとスマートコントラクト連携を前提に構築されているという。

これにより「Shelby」は、ストリーミングビデオ、AI(人工知能)、分散型物理インフラ(DePIN)アプリケーションなど、クラウドと同等のスピードとリモートアクセスを求める開発者向けの設計がなされている。

「Shelby」は、高頻度かつリアルタイム性が求められるユースケースに対応するため、秒単位以下でのオンチェーンリード実行、アクセスロジックの即時反映、支払いや報酬の動的ルーティングといった高度な要件を満たすチェーンインフラを必要とする。

こうした要件に対し、アプトスの技術を基盤とし、エンドツーエンドで600ミリ秒のファイナリティを実現。1秒あたり3万件のトランザクション処理(30,000 TPS)を可能とし、ガス代は1トランザクションあたり0.000005ドルとされている。

また、アプトスが採用するムーブ(Move)ネイティブのスマートコントラクトにより、ストレージの制御、アクセス管理、報酬ルーティングなどがリアルタイムかつ柔軟に実装可能とされる。

さらに「Shelby」はAptos Move VM(仮想マシン)の上に構築されており、開発者は簡単なスマートコントラクトでプログラマブルにデータ管理を行うことができる。アプトスの高速ファイナリティやパラレル実行能力により、Web2に匹敵、あるいはそれ以上の体験が可能となるという。

加えて、「Shelby」はチェーンアグノスティック設計となっており、イーサリアム(Ethereum)やソラナ(Solana)など複数のブロックチェーンに対応するとしている。

アプトス・ラボの共同創業者でありCEOのエイブリー・チン(Avery Ching)氏は、「(Shelbyは)単に高速かつ柔軟なだけでなく、リアルタイムで動作し、複数のチェーンにまたがってスケールする。開発者やクリエイターがデータと経済の完全なコントロールを保持できる、新しいアプリケーションカテゴリーを切り開くものだ」と述べている。

「Shelby」は2025年第4四半期に開発者向けのDevnet(開発ネットワーク)の公開が予定されており、順次パブリックテストネットにも展開される見通しだ。また、マルチチェーン対応の拡張も予定されている。

また、アプトス・ジャパン(Aptos Japan)の発表によれば、すでに、メタプレックス(Metaplex)、ストーリープロトコル(Story Protocol)、パイプ・ネットワーク(Pipe Network)といったプロジェクトによる「Shelby」の導入検討が進められており、日本においても生成AI、NFT、分散型コンテンツ配信分野などでの応用が期待されているという。

参考:ブログ
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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