Bybitハッキングのロールバック提案、イーサリアムコミュニティが批判

ロールバック提案、コミュニティから批判

2月21日に発生した海外大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイビット(Bybit)のハッキング後、イーサリアム(Ethereum)ブロックチェーンをロールバック(巻き戻し)するという提案に対し、イーサリアムコミュニティが強く批判している。

2月22日に暗号資産取引所ビットメックス(BitMEX)の共同創設者で元CEOのアーサー・ヘイズ(Arthur Hayes)氏がXにて、イーサリアムの共同創設者であるヴィタリク・ブテリン(Vitalik Buterin)氏に対し「バイビットを助けるためにチェーンを巻き戻すことを提唱しますか?」と投稿したところ、イーサリアムコミュニティから批判の声が集まった。ヘイズ氏は、2016年にイーサリアムブロックチェーンでロールバックが行われた事例があることから、この提案をしたという。

これに対しイーサリアム財団(Ethereum Foundation)のティム・ベイコ(Tim Beiko)氏は、自身のXアカウントにて、現在はイーサリアムをロールバックするのは不可能であると述べ、その理由を説明した。

ベイコ氏の投稿によると、以前行われたロールバックは特殊なケースであったために行えたとのこと。2016年のロールバックはイーサリアムアプリケーションのTheDAOのコードのバグによりハッキングされたが、TheDAOの開発者は、アプリケーションからの引き出しが完了する前に資金を1か月間凍結する「フェイルセーフ」機能を実装していたという。これにより資金移動を防ぎ、バグに対処する猶予があったとのこと。

今回のハッキングに関しては、マルチシグインターフェースが侵害され、悪質なトランザクションに資金管理者が署名してしまったことが原因で、TheDAOのケースとは異なり、ハッカーが資金をすぐに使用できる状態だったとのこと。これはつまり、DeFi(分散型金融)や他のチェーンへのブリッジを通して、資金を容易にミキシングできる状態であったということだ。

さらに、現在のイーサリアムはエコシステムが拡大しているため、取引所での取引や他のチェーンでの取引にも影響を与えてしまうことから、完全なロールバックを行うことは難しいという。

またオープンソースであるため、ロールバックをするとしてもハッカーに知られずに実行することが不可能であるとのこと。

なおバイビットのCEOであるベン・ジュー(Ben Zhou)氏が2月23日に行ったXのスペースにて、バイビットチームもイーサリアム財団に連絡を取り、「ロールバックで解決できる可能性」について確認したことを明らかにした。またそうした決定は、コミュニティが何を望んでいるかによって決められるべきだとジュー氏は指摘した。

画像:iStocks/Yevhenii-Dubinko

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この記事の著者・インタビューイ

田村聖次

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。

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