豪大手銀行ANZがカーボンクレジットのトークン化に成功、CBDC実証の一環で

豪カーボンクレジットのトークン化と取引が成功

オーストラリアの4大銀行であるオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)が、「グローロ・カーボン・ベンチャーズ(Grollo Carbon Ventures:GCV)」と提携し、オーストラリアのカーボンクレジット(Australian Carbon Credit Units:ACCU)のトークン化及び取引に成功したと4月5日発表した。

これは中央銀行デジタル通貨(CBDC)パイロットの一環として行われ、ANZにとって初のユースケースとなるという。

オーストラリアにおけるCBDCのユースケーステストは、オーストラリア中銀のオーストラリア準備銀行(Reserve Bank of Australia:RBA)とデジタル金融共同研究センター(DFCRC)が、パイロット版の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を用いて行うことを3月発表していた。

ANZは、このユースケーステストに参加するプロバイダーとして名を連ねていた。

なおプロジェクトの期間は1年間が予定されており、終了は2023年の半ばとなっている。

ANZは既存のACCUをトークン化し、ステーブルコイン「A$DC」を発行。GCVは、そのステーブルコインA$DCをANZのスマートコントラクトを通じてほぼリアルタイムで決済できたとのことだ。

なおこの取引は公開されたパーミッションレスブロックチェーン上で行われたという。デジタル資産を利用することで決済時間が短縮され、決済に関連するカウンターパーティリスクを軽減することが実証されたとのこと。

ANZのバンキング・サービス・リーダーであるナイジェル・ドブソン(Nigel Dobson)氏は「トークン化を炭素市場に適用すると、効率性と透明性を向上させ、リスクを低減し、基盤となるプロジェクトの特性を維持することで、気候変動対策への投資を促進する可能性が期待される」とコメントしている。

グローログループCEOのロレンス・グローロ(Lorenz Grollo)氏は「より多くの組織がネットゼロ移行計画を実施する中で、自然を利用した資産に対する需要は大きく伸びることが予想される」と述べた。

なおネットゼロとは温室効果ガスの排出量を「正味ゼロ」にすることで、ネットゼロ計画は、世界中の企業・自治体・大学などが、2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにすることを目指すキャンペーンだ。

ACCUについて

ACCUは排出削減基金を通じ、クリーンエネルギー規制当局(CER)が、承認された排出権の回避・削減除去の方法論に準拠したプロジェクトに対して発行するもの。 企業はACCUを、オーストラリア政府制定の排出削減法に従った遵守義務に対しての排出量相殺・自主的なカーボンニュートラルの表示・認定に使用できるという。

またACCUは、選択された方法論・プロジェクトの場所及び提案者・環境および社会的な追加利益など、その基礎となるプロジェクトに起因する固有情報を有するとのこと。

トークン化することで、これらの属性を正確に記録し、資産の完全性を確保するのに役立つとのことだ。

「A$DC」について

ANZは昨年3月、約27億円(3000万豪ドル)のステーブルコイン「A$DC」の取引を実施。

「A$DC」発行の経緯には、米ドルステーブルコイン「USDC」の取引プロセスが複雑化していることがあるという。ANZはその状況を踏まえ、「A$DC」を活用し、取引プロセスをよりシンプルなものにしたとのこと。 具体的には銀行口座と法定通貨の取引プロセスをすべて回避し、「A$DC」をエンドツーエンド(E2E)で取引できるようにしたとのことだ。

なお取引時間は約5分とのこと。また「A$DC」を活用することで「USDC」の取引コストと為替リスクを負う必要がなくなったとされている。

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参考:ANZ銀行
デザイン:一本寿和
images:iStocks/EyeOfPaul

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
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