イーサリアム財団、耐量子暗号・シールド送金含む長期構想「strawmap」公開

最短8秒ファイナリティへ

イーサリアム財団(Ethereum Foundation:EF)が、2029年までに7回のハードフォークを想定する長期ロードマップ「ストローマップ(strawmap)」を公開した。ベースレイヤー(L1)の抜本的な刷新を掲げ、トランザクションのファイナリティ(確定時間)を現在の約16分から最短8秒へ短縮する構想など、近年で最も野心的な計画となっている。

なおストローマップは「たたき台(strawman)」と「ロードマップ(roadmap)」を組み合わせた造語だという。

この文書はEFリサーチャーのジャスティン・ドレイク(Justin Drake)氏が2月26日に公開したもので、今後10年を見据えたアップグレード全体像を提示。イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏もこれを「非常に重要」と評価し、特にファイナリティ短縮について詳細に説明している。

現在、イーサリアムでトランザクションが最終確定するまでには約12〜15分を要する。ロードマップでは、新たなコンセンサスメカニズム「ミニミット(Minimmit)」などの導入により、これを最短8秒まで圧縮することを目指す。

ミニミットは、従来の複数ラウンド投票ではなく、単一ラウンドで合意形成を行うアルゴリズムだという。

また、現在12秒のスロット時間(ブロック生成間隔)を、8秒、6秒、4秒、最終的には2秒まで段階的に短縮する案も示されている。各段階はネットワーク安全性の検証を前提に進められる。

ブテリン氏はこのアプローチを、ネットワークのパラメータを「固定値」ではなく「調整可能なダイヤル」として扱う発想だと説明。コンセンサス構成要素を一つずつ置き換えていく、いわばテセウスの船のような刷新になると述べている。

ストローマップでは、イーサリアムの将来像を示す5つの「ノーススター(最重要目標)」が掲げられている。具体的には、秒単位でトランザクションのファイナリティを実現する高速なL1の構築、1ギガガス/秒(約1万TPS)規模の処理能力を持つL1の実現、さらに1ギガバイト/秒(約1000万TPS)規模に達するL2の拡張が挙げられる。また、量子コンピューター時代を見据えた耐量子暗号の導入、そしてシールドETH送金によるネイティブなプライバシー機能の実装も柱となっている。

ここでいうL2とは、アービトラム(Arbitrum)やオプティミズム(Optimism)といった、イーサリアム上で稼働する拡張ネットワークを指す。ロードマップでは、L1のスループットを約1万TPS規模まで高めると同時に、L2では1,000万TPS級の処理能力を目標としている。

なお、「ギガガス」や「テラガス」という表現は、イーサリアムの計算単位である「ガス」に基づくスループット目標を示すもので、ネットワークが1秒あたりに処理できる計算量の大幅な拡張を意味している。

ロードマップでは、耐量子暗号(ポスト量子暗号)を具体的なフォーク目標として明示。現在の楕円曲線暗号に代わり、量子コンピューターに耐性を持つハッシュベース署名方式などの導入を視野に入れている。

ブテリン氏も2月27日のXの投稿で、イーサリアムにおける量子耐性ロードマップを説明。コンセンサス層署名、KZGベースのデータ可用性、EOA署名、ZK証明など、量子脆弱性を持つ領域を段階的に置き換えていく構想を示した。

また、シールドETH送金の実装も掲げられている。現在のイーサリアムでは送金額や送信元・送信先がすべて公開されているが、将来的には取引詳細を秘匿できる仕組みをネイティブに組み込む方針だ。

こうした長期的かつ野心的な計画が示される一方で、足元のETH市場センチメントは必ずしも強気とは言えない状況だ。

ストローマップはあくまでたたき台であり、予測ではなく議論促進のための調整ツールと位置づけられている。対象期間は今後10年末までで、おおよそ6か月ごとに1回のフォークを想定し、2029年までに7回のフォークを描いているという。ストローマップのドラフトは人間中心の開発を前提としているが、AI駆動開発や形式検証が進めば大幅に短縮される可能性もあるとドレイク氏は伝えている。

画像:Ethereum

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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