米SEC、未登録取引所運営及び資産管理混同でクラーケンを提訴、同社は反論も

SECがクラーケンを提訴

米証券取引委員会(SEC)が、米大手暗号資産(仮想通貨)取引所のクラーケン(Kraken)の2つの事業体であるペイワード(Payward Inc.)とペイワードベンチャーズ(Payward Ventures Inc.)に対し、未登録の取引所を運営したとして11月20日告発した。

SECは声明にて、クラーケンは少なくとも2018年9月以降、暗号資産証券の売買を違法に促進し、数億ドルを稼いだと主張。

またSECは、クラーケンが未登録の取引所としてだけでなく、未登録のブローカー、ディーラー、清算機関サービスも組み込み運営したと指摘している。

さらにSECは、クラーケンが時々で顧客資金を保有する口座から直接運営費を支払っていたと主張。顧客資産と自社資産を混合していると指摘している。

クラーケンの業務慣行、欠陥のある内部統制、不十分な記録管理慣行が顧客にさまざまなリスクをもたらしているとSECは主張している。

また米サンフランシスコの連邦地方裁判所に提出されたSECの訴状では、クラーケンが1934年証券取引法の登録規定に違反したと主張されている。SECは裁判所へ、差止命令による救済措置、行為に基づく差止命令、不正に得た利益と利息の没収、および罰則を求めている。

またSECは訴状の中で、クラーケンが取り扱う複数の暗号資産を証券認定した。これにはアクシーインフィニティ(AXS)、アルゴランド(ALGO)、コスモス(ATOM)、ポリゴン(MATIC)、ソラナ(SOL)、ダッシュ(DASH)などが含まれている。

クラーケンは2月、SECからの告発を受け暗号資産ステーキングサービスおよびステーキングプログラムの提供・販売を停止することを発表。また、3,000万ドル(約39億円)の遺棄金、予断利息、民事罰の支払いに合意している。

クラーケンが反論

SECの訴状提出に対し、クラーケンは11月21日声明を出している。

声明にてクラーケンは、今回の訴訟はクラーケンが提供する商品には何の影響もなく、サービス提供を続けると発表。

SECの未登録で取引所を運営したとする主張に対しクラーケンは、2023年8月のコインベース訴訟での裁判所の裁定を例に挙げ反論。「法律は私たち(暗号資産取引所)の味方だ」と述べている。

SECはこの訴訟で、取引プラットフォームで売買されるデジタル資産はまさに証券取引であると主張。ニューヨーク南部地区連邦裁判所はこれに同意せず、SECは関連する法的テストを完全に満たしていないと裁定している。また裁判所は、SECの前例のない法理論は、こういった取引の「経済的実態」に反すると判断している。

クラーケンは、SECが暗号資産の登録に関する基準を明示していないと主張。SECは存在しない制度への準拠を求めていると批判した。

そして「顧客資金と自社資金の混合」に関してクラーケンは、訴状の中でSECが、顧客の資金が紛失したとも、損失が発生したとも、損失が発生するとも主張していないと指摘。顧客資金をずさんに管理したとする具体的な証拠がないと示唆している。

またクラーケンは10年以上にわたる事業展開の中で、米国、英国、欧州連合、カナダをはじめとする先進国や新興国を含む世界中で登録、ライセンス、認可、承認を取得してきたと主張。クラーケンは一貫してデジタル資産に関するルールを支持してきたと述べている。

またクラーケンは米国議会で暗号資産関連の明確な規制法案が進行中である現状にも触れ、「包括的な議会の行動は正しい道であり、クリプト(ブロックチェーン・暗号資産の総称)とWeb3が世界中で進歩する中、米国が訴訟によって後進国になることを避けることができる」とこの動きを支持している。

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参考:SECクラーケン
images:iStock/ablokhin

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髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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