米SECの暗号資産企業取締りへの資金使用禁じる法案、米下院で通過

反対意見なく通過

下院多数党院内幹事のミネソタ州選出のトム・エマー(Tom Emmer)議員が、「米証券取引委員会(SEC)の暗号資産(仮想通貨)に対する取締り執行から事業者を守る法案」を提出。11月9日に反対意見なく下院を通過した。

なおこの法案は「金融サービス・一般政府歳出法」の修正案となっている。同修正案は、SECに暗号資産を管轄する法律が議会で可決されるまで、SECの暗号資産に関する取締り執行に資金を使用することを禁止するものだ。

またエマ―議員は、SECのゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長を「からっぽで無能だ」と強く非難し、同修正案は「犯罪者や詐欺師を追及する私たちの能力を損なうことなく、アメリカのイノベーションと資本形成を圧迫しているゲンスラー委員長の規制乱用パターンに終止符を打つことを目指すもの」だと説明した。

また同修正案により議会は「暗号資産業界が米国で成長・発展するチャンスを与えるための活動を続けられる」と述べている。

ゲンスラー委員長への厳しい声

エマ―議員はSECとゲンスラー委員長に対し、厳しい言葉で追及している。

SECに対しては、ゲンスラー委員長指揮の下でデジタル資産業界に対する何十件もの強制執行を行ったが、従うべき規則や規制を一度も最終決定していないと指摘。またゲンスラー委員長は、規制ルールの策定を避けているとし、「ルールなくして、暗号資産事業者はどうコンプライアンスに従えというのか」と批判した。

またエマ―議員は、ゲンスラー委員長が、破綻した暗号資産取引所FTXやテラフォームラボ(Terraform Labs)などの悪徳企業を見逃しながら、米大手暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)を提訴してきたことを批判。

「コインベースは、多くの企業が余儀なくされるような海外移転ではなく、米国で必死に生き残り、イノベーションを起こそうとしている上場企業である」とエマ―議員はコインベースを評価した。

その他にもエマー議員は「またゲンスラー委員長は、明確な規制ルール策定が強く求められている最中に、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)といったセレブリティをターゲットにし、国民の税金を費やして自画自賛していた。(FTXの創業者で前CEOの)サム・バンクマン・フリード(Samuel Bankman-Fried:SBF)氏が目と鼻の先でねずみ講を運営していたにもかかわらずだ」と痛烈に批判した。

SECはデジタル資産の管轄権がないと指摘

さらにエマ―議員は「SECはそもそもこの資産クラスについて議会から管轄権すら与えられていないにもかかわらず、SECはデジタル資産業界を包括し破壊するために、強制執行で管轄権を拡大しようとしている」と指摘。

管轄外の強制執行事件のひとつとしてリップル裁判を引用した。

さらには今年8月、控訴裁がSECに対し、グレイスケール(Grayscale)の現物ビットコインETF申請に対する承認拒否を取り下げるよう命令を下した件も引き合いに出した。控訴裁はSECが「恣意的かつ気まぐれ」に行動していると判断している。

またSECが行政手続法と議会審査法を遵守していない違法な暗号資産会計規則を作成したことを政府説明責任局(GAO)が10月に明らかにしたことにもエマ―議員は言及している。

エマ―議員は「SECのゲンスラー委員長は、新しく有望なデジタル資産業界を海外に追いやるという政治的課題を達成するために、機関の権限を乱用し続けることはできない。デジタル資産イノベーションの未来は、DCの選挙で選ばれたわけでもない官僚ではなく、アメリカ人によって決定されるのだ」と結んだ。

エマ―議員はクリプトに好意的である人物として知られており、9月26日にはゲンスラー委員長に対し、現物ビットコインETFの上場を認めるよう求める書簡を他の下院議員らと連名で送っている。同書簡には「SECが現物ビットコインETFを差別しないように」と書かれていた。

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参考:発表
images:iStocks/gorodenkoff

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
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