NyxがイーサL2「Eris」開発開始、AIエージェント向けDeFi検証基盤として

NyxがDeFi検証用L2を開発開始

イーサリアム(Ethereum)に特化した私設研究機関「一般社団法人ニックス・ファウンデーション(Nyx Foundation:以下、Nyx)」が、分散型金融(DeFi)の動的脆弱性を検証する基盤「エリス(Eris)」の開発開始を5月14日に発表した。同基盤はイーサリアムレイヤー2(L2)環境として構築される予定だ。

エリスは、AIエージェントによる敵対的金融シミュレーションを通じて、DeFiにおける「動的脆弱性」を検証することを目的とした検証用基盤だ。エリスでは、DeFiプロバイダーがメインネットと同じツールチェーンで自社コントラクトをデプロイできる。同団体によると、これにより自律的に取引・攻撃・検証を行うAIエージェント群と継続的に相互作用できる環境を提供するという。

Nyxは同基盤を開発する背景として、従来のコントラクト監査、形式検証、バグバウンティはいずれも有効な手法である一方で、不十分な点もあるという認識を示した。

同団体によると、従来のコントラクト監査、形式検証、バグバウンティは「単発・静的・人的な営み」であり、流動性提供、アービトラージ、清算などが相互作用する中で発生する「動的脆弱性」は事前に捉えきれていないとしている。

この点について今回「あたらしい経済」編集部がエリス開発を主導するNyxの足立智紀氏へ取材したところ、Nyxが想定するリスクについて具体的な説明が得られた。同氏は、「ケルプDAO(KelpDAO)のハッキングを発端として、アーベ(Aave)で大規模な資金流出・流動性逼迫が生じたように、特定のイベントを起点として連鎖的に他のDeFiアプリケーションへ影響が及ぶリスクを重要視しています」と説明した。

つまり、Nyxが想定する「動的脆弱性」とは、複数のDeFiプロトコルや市場参加者が相互作用する中で顕在化する連鎖的リスクを指す。

また足立氏は、エリスの位置付けについて、「基本的にはイーサリアムやDeFi全体に対する実験・検証基盤として考えているので、既存のL2のような経済圏を構築する予定はない」と述べている。一方で同氏は、「仮にエリスと他のチェーンが接続するなどして、同チェーンにあるシミュレーション用トークンに価値がついてしまう可能性は排除できない」とも説明した。

また足立氏は、「最初の段階ではブロックチェーン自体のセキュリティというよりも、DeFiアプリケーションのセキュリティにフォーカスしている」と述べた。そのうえで同氏は、AIエージェント環境下における検証データや知見を継続的に蓄積し、将来的にDeFi全体へ提供していく構想を示した。また同氏は、「将来的には、ブロックチェーンの検証ノードであるバリデーターなどもAIが動かすことによって、より広範なシミュレーション環境を提供できるかもしれない」とも述べている。

なおNyxによると、エリスはAIエージェント関連EIP(イーサリアムの機能改善や規格に関する提案書)の実環境フィードバック基盤としても機能するという。2026年1月にメインネット上でレジストリ実装が稼働したERC(イーサリアム標準規格)-8004については、100体以上のAIエージェントが利益を競う環境下で実運用テストが可能になるとしている。

技術スタックには、オプティミズム(Optimism)のオープンソースL2スタックを基盤とした「OPスタック(OPStack)クローン」を採用予定。対象領域はAMM、レンディング、フラッシュローンなどのDeFiインフラになるとのことだ。

AIエージェント・コンペティション「ASCON」を開催

今回の発表にあわせてNyxは、エリス上で稼働するAIエージェント・コンペティション「アスコン(ASCON:AI Simulation Competition on Network)」の第1回開催に向け、スポンサー募集を開始した。第1回ASCONは今年第4四半期開催予定で、賞金総額は3万ドル(約477万円)、参加目標は100チームとしている。

ASCONでは、参加者が「トレーダー(Trader)」、「ハッカー(Hacker)」、「ベリファイア(Verifier)」の機能を持つAIエージェントを提出する。トレーダーはアービトラージ、JIT流動性、MEV、LP戦略などを通じて収益性向上を担う。ハッカーは脆弱性のあるコントラクトをデプロイするなどして他のAIエージェントを欺く。ベリファイアは、コンペ環境内に存在する脆弱性や新規コントラクトを検証し、攻撃回避を担う役割として設計されている。

第1回ASCONでは、Nyxが開発するセキュリティ監査AIエージェント「スペカ(SPECA)」を、ベリファイアの初期ベースラインとして投入する予定だ。

またエリスでは、登録済みAIエージェントのみがトランザクションを発行できる「Agent-only環境(エージェントオンリー環境)」を採用するほか、CEX価格乖離、ステーブルコインのデペッグ、急落イベントなどを意図的に注入する「シナリオエンジン」を備えるという。

さらに、コンペ終了後も入賞エージェントは次回コンペの仮想敵として継続的に残る設計だ。

参考:プレスリリース
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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