AIエージェントの発見と信頼形成を共通化
イーサリアム(Ethereum)のメインネット上で、AIエージェントの発見や信頼形成に関する新たな標準規格「ERC-8004」が間もなく稼働する予定だ。イーサリアム公式Xより1月28日に発表された。
「イーサリアム改善提案(Ethereum Improvement Proposals:EIP)」の掲載情報によるとERC-8004は、異なる企業や組織が開発したAIエージェント同士が事前の信頼関係なしに相互作用できる環境の整備を目的としている。同提案は「Standards Track: ERC」として公開されており、現時点のステータスはDraftである。
現在、多くのAIエージェントは特定の企業やサービスの内部では機能する一方、組織をまたいだ利用においては共通の信頼基盤が存在しないことが課題とされてきた。AIエージェントがオープンな環境で活動する際の具体的な課題として、「エージェントをどのように見つけるか」、「相手が正当で信頼できる存在かをどう判断するか」、「成果物が適切に実行されたかをどのように検証するか」の点が挙げられる。
こうした課題に対応するため、ERC-8004ではイーサリアム上に3つの軽量なオンチェーン・レジストリを定義している。これらはメインネットや任意のL2にデプロイ可能な「チェーンごとの単一実装(singletons)」として設計されている。
1つ目は「アイデンティティ・レジストリ(Identity Registry)」だ。AIエージェントに対してNFT規格「ERC-721」を用いた一意の識別子を付与し、ポータブルで検閲耐性のある識別子としてエージェントの登録情報に解決できるようにする。これによりエージェントは組織やプラットフォームを越えて発見可能な存在となる。
2つ目は「レピュテーション・レジストリ(Reputation Registry)」で、AIエージェントに対するフィードバック信号の投稿・取得を行うための共通インターフェースを提供する。評価の集計やスコアリング自体はオンチェーンとオフチェーンの双方で行える設計とされており、監査サービスや保険といった周辺サービスの構築も想定されている。なおフィードバック値は暗号学的な「署名付き」ではなく、int128の「符号付き(正負を取りうる)固定小数値」として定義される。
3つ目は「バリデーション・レジストリ(Validation Registry)」だ。これは、AIエージェントが実行したタスクや成果物について、第三者による検証を要求・記録するための仕組み。ステークを用いた再実行検証や、ゼロ知識機械学習(zkML)、TEE(Trusted Execution Environment)オラクルなど、複数の検証方式を組み合わせて利用可能だとされている。
これら3つの仕組みは、AIエージェントに対して「誰が運用しているか」、「どのような評価を受けてきたか」、「成果が検証されているか」という、最低限の信用情報を共通フォーマットで提供するものと位置付けられる。ERC-8004は、AIエージェントが低リスクな業務から高リスクな業務まで、価値やリスクに応じて異なる信頼モデルを選択できる設計を採用している点も特徴だ。
なおERC-8004では、支払い手段や報酬設計はこの規格の対象外とされている。一方で、「x402」などの決済規格と組み合わせることで、支払いを伴う実行結果を評価シグナルに反映できる例も示されている。
イーサリアムは今回のERC-8004を通じて、AIエージェントが組織やプラットフォームを越えて連携するための土台となる仕組みを整備する狙いだ。AIエージェント同士が直接やり取りし、業務を分担・委託するような活用が広がる中で、どのようなユースケースやサービスがこの標準の上に構築されていくのかが今後の焦点となる。
なおx402は、インターネット上でAPIやAIエージェントが都度の契約や請求処理を介さずに支払いを行うことを想定したオープンソースの決済プロトコルだ。API利用料やデータ、計算資源などの対価を、通信の流れの中で直接決済する仕組みを目指し2025年5月に公開された。
ERC-8004 is going live on mainnet soon.
— Ethereum (@ethereum) January 27, 2026
By enabling discovery and portable reputation, ERC-8004 allows AI agents to interact across organizations ensuring credibility travels everywhere.
This unlocks a global market where AI services can interoperate without gatekeepers. https://t.co/Yrl0rvnSxj
参考:イーサリアム改善提案
画像:PIXTA