イーサリアム財団、ポスト量子セキュリティを最重要戦略に、専任チーム立ち上げ

量子時代を見据えたネットワーク設計の検討を本格化

イーサリアム財団(Ethereum Foundation)の研究者であるジャスティン・ドレイク(Justin Drake)氏が、ポスト量子(Post-Quantum:PQ)セキュリティを財団の最重要戦略の一つとして位置付け、新たに専任チームを立ち上げたことを自身のXアカウントで1月23日に明らかにした。同財団が、量子コンピュータ時代を見据えたセキュリティ対応を本格化させる形だ。

ドレイク氏によると、新設されたPQチームは暗号技術エンジニアのトーマス・コラトガー(Thomas Coratger)氏が率い、暗号研究者のエミール(Emile)氏が参加する体制となる。同氏は、形式検証を重視した暗号および証明設計の基盤である「リーンVM(leanVM)」を、イーサリアムのポスト量子戦略を支える中核的な要素だと説明している。

ドレイク氏は、イーサリアム財団がこれまで量子耐性を巡る研究を水面下で進めてきたとした上で、今回の判断により、研究中心の段階から実装および運用を見据えたフェーズへ移行したと位置付けた。量子対応は長期的な課題である一方、移行には時間を要するため、早期に取り組む必要があるとの認識を示している。

ブロックチェーンにおける量子コンピュータのリスクは、業界全体で議論されている課題だ。量子コンピュータが実用化した場合、現在主流の暗号署名方式や証明技術の一部は理論上安全でなくなる可能性があり、取引の正当性や利用者の本人性を担保するブロックチェーンの前提が揺らぐ恐れがある。一方で、量子耐性を持つ暗号方式は計算負荷やデータサイズの面で課題が多く、既存ネットワークに単純に置き換えることは難しいとされている。

このため量子対応は、暗号アルゴリズムの更新をすればいいという対応だけでは済まされない。休眠アカウントや鍵を喪失した資産が存在していること前提に、利用者に移行を強制しない形で安全性を確保できるかといったブロックチェーン全体の設計課題として捉えられている。

こうした課題認識を背景に、イーサリアム財団は量子対応を長期的な設計テーマとして位置付け、具体的な検討と実装に着手している。すでに複数クライアントが参加するポスト量子対応の検証用devnet(複数世代)が稼働している。また、「All Core Devs(ACD) Post Quantum」ブレイクアウトコールを2月から隔週で開始予定だという。

また同財団は、暗号基盤の強化を目的とした研究支援にも取り組んでいる。ハッシュ関数「ポセイドン(Poseidon)」の改良を対象とした100万ドル(約1.54億円)の研究賞に加え、ポスト量子暗号全般を対象とした同規模の施策も進めているとする。

さらにイーサリアム財団は、研究者や開発者向けのイベントや教育活動も計画している。ドレイク氏は、ポスト量子戦略の全体像を示すロードマップを今後公開するとしており、「資金損失ゼロ」「ダウンタイムゼロ」での移行を目標に掲げている。

なお、量子コンピュータへの対応を巡る動きは、イーサリアム財団に限ったものではない。米暗号資産(仮想通貨)取引所のコインベース(Coinbase)は1月21日、量子コンピューティングがブロックチェーン技術に与える影響を評価するための独立した諮問委員会を設立したと発表している。

画像:PIXTA

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

合わせて読みたい記事

コインベース、量子コンピュータに備え独立諮問委員会を設立

米暗号資産(仮想通貨)取引所「コインベース(Coinbase)」が、量子コンピューティングがブロックチェーン技術に与える影響を評価するための独立した諮問委員会「コインベース量子コンピューティング・ブロックチェーン独立諮問委員会(Coinbase Independent Advisory Board on Quantum Computing and Blockchain)」を設立した