ビットコイン開発者、量子コンピューター脅威に対する段階的な暗号移行を提案

ビットコイン開発者らがレガシー暗号化を段階的に無効化する提案発表

暗号資産セキュリティ研究者のジェームソン・ロップ(Jameson Lopp)氏らが、量子コンピューターによる攻撃からビットコインを保護するため、従来の暗号化方式を段階的に無効化する新たな提案を7月16日に発表した。

ただし、この提案は量子耐性のない暗号化で保護されたビットコインを最終的に凍結することで、サトシ・ナカモト(Satoshi Nakamoto)のウォレットを含む初期のビットコインアドレスに影響を与える可能性がある。

同提案は3段階で構成されており、フェーズAでは従来のECDSA/Schnorr署名アドレスへの送金を禁止し、量子耐性フォーマットのP2QRHへの移行を促進する。

フェーズBでは、レガシー署名を完全に無効化し、量子脆弱性のあるアドレスのコインを永続的に凍結する。

そしてフェーズCでは、BIP-39シードフレーズの知識証明を使った回復パスの導入を検討している。

研究者らは量子コンピューターがビットコインの暗号化を破る能力を2027年にも獲得する可能性があると警告している。現在、全ビットコインの約25%が公開鍵を露出しており、量子攻撃に対して脆弱な状態にある。攻撃者は秘密裏に休眠ウォレットから資金を抜き取ることで、「Q-day」攻撃を長期間隠蔽できる可能性があるという。

提案者らは「この提案はビットコインの歴史において根本的に異なるものだが、量子コンピューティングが提起する脅威もまたビットコインの歴史において根本的に異なる脅威である」と説明している。これまでビットコインは暗号学的プリミティブに対する実存的脅威に直面したことはなく、もし誰かが量子攻撃に成功した場合エコシステム全体に重大な経済的混乱と損害をもたらすという。

同提案は現在ドラフト段階でBIP番号はまだ割り当てられていない。フェーズAはBIP-360実装の3年後に開始され、フェーズBはフェーズAの2年後に発動される予定だ。この提案は量子コンピューターの進歩が加速する中、ビットコインが量子時代を生き残るための唯一の道筋となる可能性がある。

なお7月には、15年間休眠していたサトシ時代のビットコインウォレットが85億ドル相当のビットコインを移動させる事例が発生しており、セキュリティ向上を目的とした移転の可能性も指摘されている。なお約110万BTCがサトシや初期マイナーの初期ペイトゥパブキー(pay-to-pubkey)アドレスに紐づいている。

参考:ギットハブ
画像:iStocks/Rawpixel

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田村聖次

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
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