米国で「予測市場連合」発足、カルシやクリプトドットコムなど参加。CFTCはデータ規制で柔軟対応

予測市場業界の成長を受け、主要企業が連合を結成

予測市場プラットフォーム運営のカルシ(Kalshi)と大手暗号資産(仮想通貨)取引所クリプトドットコム(Crypto.com)が、予測市場事業者の全米連合である「予測市場連合(Coalition for Prediction Markets:CPM)」を12月12日に立ち上げたと発表した。

同連合には、暗号資産取引所コインベース(Coinbase)、個人投資家向け取引プラットフォームのロビンフッド(Robinhood)、スポーツゲーム事業者アンダードッグ(Underdog)などの大手企業が参加している。今後も複数の企業が参加に向けて協議中であるという。

予測市場プラットフォームは、政治、スポーツ、経済、エンターテインメントなどの結果についてバイナリー契約(binary contracts)を取引できるサービスだ。米国では昨年、連邦裁判所が選挙関連ベッティングの禁止に関する判断を示したことが、予測市場セクター拡大の追い風になったとされる。

暗号資産企業ズモ(Zumo)の創設者ニック・ジョーンズ(Nick Jones)氏は「これは投資家の関心が高まる契機となり、この新しい連合は業界をさらに正当化し、運営規則を強化して誠実性の基準を引き上げる」と述べている。

カルシや競合のポリマーケット(Polymarket)などの予測市場スタートアップは2025年に急速に拡大している。カルシは最新の資金調達ラウンドで評価額が110億ドル(約1兆6,500億円)と2倍以上に増加した。

業界全体では2025年1月から10月までに279億ドル(約4兆2,000億円)の取引が行われたという。この数値はクリプトドットコムリサーチが「contracts traded」ベースの取引量として示した推計である。

連合の執行委員会メンバーのマット・デイビッド(Matt David)氏は「米国は予測市場にとって最大のフロンティアであり、私たちが目にしている勢いは、統一された業界の声を重要なだけでなく必要不可欠なものにしている」と語った。

連合の焦点は、予測市場の連邦規制枠組みの強化、インサイダー取引を抑制するための全国的な誠実性基準の設定、州レベルの過剰な規制への対抗などになるという。カルシの企業開発責任者で連合の執行メンバーであるサラ・スレーン(Sara Slane)氏は「予測市場はインサイダー取引を防ぎ、消費者を保護し、これらの市場が透明で腐敗のないものであり続けることを保証する強力な連邦保護措置とともに運営されなければならない」と述べている。

なお投資家は予測市場を潜在的な成長分野と見なしており、ロビンフッドやアンダードッグなどの大手企業がこの分野に参入している。ただし批評家は、予測市場はオンラインギャンブルプラットフォームに過ぎないと主張している。

CFTCが予測市場事業者にノーアクションレターを発行

米商品先物取引委員会(CFTC)の市場監督部門(DMO)および清算・リスク部門(DCR)のスタッフが、複数の登録事業者からの要請に応じてスワップデータ報告および記録保管規制に関してノーアクション(no-action)の立場を取ることを12月11日に発表した。

CFTCは、特定の登録事業者またはその参加者が、特定のスワップ関連の記録保管要件を満たさなかったこと、および登録事業者で実行された、またはその規則の対象となる「一部の完全担保型オプション契約(スワップに該当)」に関連するデータをスワップデータリポジトリに報告しなかったことについて、スタッフレターに定める条件に従う限り、執行措置の開始を推奨しないとした。

このノーアクションは限定的な状況にのみ適用され、同様の状況にある他の指定契約市場(DCM)およびデリバティブ清算機関(DCO)向けの扱いと同水準だとしている。

スタッフレターの宛先として公表されているのは、ポリマーケット(Polymarket)、ジェミナイ(Gemini)、プレディクトイット(PredictIt)、レジャーX/MIAX(LedgerX/MIAX)に関連する企業だ(Gemini Titan, LLC、MIAX Derivatives Exchange, LLCおよびMIAX DCM, LLC、QC Clearing LLC(Polymarket Clearing)、Aristotle International, Inc.(PredictIt運営))

これにより各社は、レター記載の条件(例:契約の完全担保、所定の情報提供や記録保管、当局の検査に応じること等)を満たす限り、当該の報告・記録保管義務の一部について、CFTCによる法執行リスクが抑制される形となる。

参考:カルシプレスリリースCFTCCFTC2
画像:iStocks/Thinkhubstudio

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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