米サークルのQ3決算、「USDC」流通2倍超で予想上回る増益に

USDC流通2倍超で予想上回る増益に

米ステーブルコイン発行企業サークル(Circle)が第3四半期決算を11月12日に公表。主力ステーブルコイン「USDC」の流通額拡大に伴う準備資産からの利息収入の増加を背景に、ウォール街の予想を上回る利益となった。一方で同社の株価は、将来的な競合やバリュエーション(株価水準)に対する懸念から下落した。

法定通貨や米国債など低リスク資産を裏付けとするステーブルコインの世界的な採用は加速しており、伝統的な金融機関がこの分野で新商品を相次いで投入する一方、各国当局もより明確なルール作りに動きつつある。

暗号資産分野での世界的リーダーシップ確立を公約として掲げるトランプ政権は今年前半に「ジーニアス法(Genius Act)」を成立させた。同法は、米ドル建てステーブルコインの規制枠組みを整備し、デジタル決済の安全性向上を目的とするものだ。

ザックス・インベストメント・リサーチ(Zacks Investment Research)の株式ストラテジスト、デービッド・バートシャック(David Bartosiak)氏は「これはもはや単なる暗号資産投機ではない。デジタル金融の基盤が一つ一つ築かれているのだ」と述べた。

USDCの流通額は前年比で2倍以上増え、第3四半期末時点で737億ドル(約11兆4,005億円)に達した。USDC発行元のサークルは、ステーブルコインを裏付ける法定通貨準備金を運用することで、準備資産からの利息収入を得ている。

同社の1株当たり調整後利益は0.36ドル(約56円)となり、LSEG集計によるアナリスト予想の0.22ドル(約34円)を上回った。準備資産からの収益を含む売上高は66%増の7億3,980万ドル(約1,144億円)となった。

ここ数カ月、サークルは伝統的な金融機関との提携を相次いで発表し、USDC流通量拡大に向けた複数の施策を展開している。

しかし同社の株価は12日に10%下落した。足元の調整にもかかわらず、6月の上場以来、株価はIPO(新規株式公開)価格から3倍以上に上昇している。

米タイガー証券(U.S. Tiger Securities)のアナリスト、ボー・ペイ(Bo Pei)氏は、株価の下落要因として、サークルが示した通期の粗利益率見通しが38%に引き下げられたことを挙げ、「第4四半期の業績悪化が示唆された」と指摘した。

証券会社クリア・ストリート(Clear Street)のマネージングディレクターであるオーウェン・ラウ(Owen Lau)氏はロイターに対し、「今回の株価の動きは、USDCの成長に対する依然として高い期待がバリュエーションに織り込まれていることに加え、サークルが開発中の独自ブロックチェーン『アーク(Arc)』上で発行が検討されているネイティブトークンの上場がUSDCの採用に影響を及ぼす可能性があるとの見方が背景にあるのかもしれない」と述べた。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Circle quarterly profit beats estimates on stablecoin growth
(Reporting by Arasu Kannagi Basil and Pritam Biswas in Bengaluru; Editing by Krishna Chandra Eluri)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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