英中銀副総裁、ステーブルコイン規制のさらなる緩和は「金融安定性脅かす可能性」と警告

さらなるステーブルコイン規制緩和は「金融安定性脅かすリスク」と英中銀副総裁

英中央銀行のイングランド銀行(BoE)のサラ・ブリーデン(Sarah Breeden)副総裁は11月11日のロイター(Reuters)のインタビューで、法定通貨の価値に連動するデジタル通貨であるステーブルコインのさらなる規制緩和は金融の安定性を脅かし、信用収縮を引き起こすリスクがあると警告した。その上で、英国は米国とは異なるアプローチが必要だとの見解を示した。

BoEは10日、特に決済手段として広範な利用が見込まれる「システミック」なステーブルコインに関する新たな規則を提案した。この規則は同行が2023年に示した案を緩和したものとなっている。暗号資産業界からはこの規則が不十分なものであり、さらなる緩和余地を求める声が上がっていた。

BoEの提案では、他の主要管轄区域では実施されていない、業界では不評な保有限度額や、発行者に裏付け資産の40%をBoEに預け入れる義務などがある。ステーブルコインは一般的に資産を運用して利益を生み出しており、60%は国債などの政府債に投資できるが、40%について発行者は利益が生み出せないことになる。

ブリーデン氏は、40%に設定したのは過去に起きた金融ストレスに「根拠がある」と指摘。一例として2023年の米シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻や、サークルが発行するステーブルコイン「USDC」が米ドルとの1対1のペッグを失った出来事など、預金者やステーブルコイン保有者が一斉に引き揚げた事例を挙げて、「SVBやサークルで起きた事態を見れば、この数値はおおむねそれに沿ったものだ。だからこそ、私たちはより低い数値ではなく、40%を提案している」と強調した。

また、個人のステーブルコイン保有上限を2万ポンド、大部分の企業の保有上限を1,000万ポンドに設定したのは一時的な措置であり、顧客が銀行預金を引き出してステーブルコインを購入することで預金が減る銀行の負担と信用圧力を「半減させる」ためだと説明した。

ブリーデン氏は、米国ではノンバンク金融の市場規模がはるかに大きく、流動性も高い一方で、英国では住宅ローンや他の消費者の借り入れのうち約85%を銀行からの融資に依存していると紹介。その上で「この新しい形態の通貨を導入する過程では、これまでとは違ったリスクを管理しなければならない」と訴えた。

今回のBoEの2023年の提案では、ステーブルコイン発行者に対し、裏付け資産の100%をBoEの無利息口座に預け入れる義務付け案が出されていた。業界からは、この措置が英国でのステーブルコインの普及を事実上阻害すると指摘されていた。

なお新提案の保有上限については、取引プラットフォームなどの一部の大口事業者が上限適用除外を申請できる余地も設けられている。保有上限は金融システムの安定性に関する懸念が和らげば撤廃することを前提とした「一時的措置」だとBoEは伝えている。

ブリーデン氏は、上限がいつ撤廃されるか詳細を明かさなかったが、ステーブルコインが普及した際に、銀行が失われた預金に代わるホールセール資金調達手段を開拓し、ビジネスモデルを適応させていくことをBoEは期待すると述べた。

※2025.11.15 10:00 タイトルと見出しに誤解を生む表現がありましたので、修正しました。それに合わせて本文にも追記をしました。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
英中銀副総裁、ステーブルコイン規制緩和は金融安定性脅かすと警告
(Phoebe Seers Tommy Reggiori Wilkes)
画像:Reuters

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