英中銀、ステーブルコイン規制を来年施行へ。米国と同時期に制度を稼働させる方針示す=報道

11日に新ルール案公表へ

英国の中央銀行であるイングランド銀行(BoE)のサラ・ブリーデン(Sarah Breeden)副総裁が、ステーブルコインに関する新たな規制体制について、「米国と同じ速さで導入する」と表明したと、11月6日に「ブルームバーグ(Bloomberg)」が報じている。

この動きは、英国が規制の対応で遅れを取っているとの業界の懸念を退けるものだ。

イングランド銀行は11月10日にステーブルコイン規制に関する提案制度の詳細を公表する予定。個人投資家には2万ポンド(約402万円)、企業には1000万ポンド(約20億円)の保有限度額を一時的に設定する見通しだ。イングランド銀行はこの制度の2026年末までの施行を目指しており、米国の「ジーニアス(GENIUS)法」による動きに並ぶスピードでルール整備を進める方針だ。

英米の制度設計で大きく異なる点は、ステーブルコインの保有上限の設定だ。ブリーデン副総裁は、この制限が一時的な措置であり、ステーブルコインが銀行や住宅ローン供給に及ぼす潜在的影響に対する英中銀の懸念が緩和され次第、解除される方針を示している。

同氏は「制限が問題になるとの声もあるが、実際には大きな障害にはならないだろう」と述べた。

ブリーデン副総裁は11月5日、英規制当局が、米国に比べてより慎重な姿勢を取る理由について、住宅ローン市場の構造の違いを挙げている。

同副総裁は「米国では住宅ローンはファニーメイやフレディマックが証券化して市場で資金を調達しているが、英国では商業銀行が貸し出しの中心」と説明。そのため、ステーブルコインの急拡大が銀行の貸し出し機能や住宅ローン供給に影響を与えるリスクを警戒する英国の懸念は、米国の制度にはあまり当てはまらないとしている。

米国では7月にステーブルコインを規制するジーニアス法が可決され、各国の政策方針に影響を与えている。

8月にはEU(欧州連合)がデジタルユーロ計画の見直しを開始すると報じられ、また11月4日にはカナダ政府がステーブルコイン発行を規制する新法案を導入する方針を示した。

ジーニアス法とは

ジーニアス法(GENIUS Act)は、米国の決済用ステーブルコインに対する初の包括的連邦法であり、発行残高を現金・銀行預金・米国債など安全性と流動性の高い資産で100%裏付けることを義務付ける。発行主体は、銀行や信用組合などの預金取扱金融機関、連邦認可ノンバンク、一定要件を満たす州認可事業者などの「許可された発行者」に限定し、無許可の発行を禁止する。利用者には1:1での償還権や毎月の開示・監査を通じた高い透明性を保障し、不十分な準備資産や不透明なスキームから消費者を保護することを目的とする。これにより、規制明確なドル建てステーブルコインの普及を後押ししつつ、米ドルの基軸通貨としての地位と金融システムの安定を強化する枠組みである。

参考:報道
画像:Reuters

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

合わせて読みたい記事

米DTCC子会社DTC、SECからノーアクションレター取得。規制下のトークン化サービス検証へ

米国の金融市場インフラを担うデポジトリー・トラスト・アンド・クリアリング・コーポレーション(Depository Trust & Clearing Corporation:DTCC)が、子会社であるデポジトリー・トラスト・カンパニー(Depository Trust Company:DTC)について、米証券取引委員会(SEC)の取引市場部門スタッフからノーアクションレターを取得したと12月11日に発表した

スーパーステートがトークン化株式の直接発行プログラム公開、ソラナとイーサリアムに対応

金融テクノロジー企業のスーパーステート(Superstate)は、イーサリアム(Ethereum)とソラナ(Solana)のブロックチェーン上でトークン化された株式を、米SEC(証券取引委員会)登録の公開企業(上場企業を含む)が直接発行できる新プログラム「ダイレクト・イシュアンス・プログラム(Direct Issuance Programs)」を12月10日に発表した