政府は実現へ向け国際機関と協議中か
IMF(国際通貨基金)が、余剰電力を暗号資産(仮想通貨)マイニングおよび一部産業向けに補助的に供給しようとするパキスタン政府の計画を拒否した。ウルドゥー語ニュースメディア「Independent Urdu」が7月3日に報じている。
報道によれば、パキスタンの電力省次官ファクレ・アラム・イルファン(Fakhr Alam Irfan)氏は、上院エネルギー常任委員会で、こうした措置がエネルギー市場を歪め、脆弱な同国の電力部門にさらなる負担をもたらす恐れがあるとIMFが指摘していると説明した。
パキスタンは特に冬季に余剰電力を抱えているが、IMFは電力の価格設定方針が市場バランスを乱す懸念があるとみている。
IMFは拒否の理由として、「特定産業への税制優遇にあたる」とし、電力セクター全体の健全性を損なうとの見解を示したという。
イルファン次官は「IMFはこの案にまだ同意していない」と明言。現在、世界銀行などの開発パートナーが提案内容を精査しており、政府はこの計画を撤回しておらず、内容の改善に向けて国際機関との協議を続けていると述べた。
パキスタン国内では以前から、余剰電力の有効活用策として暗号資産マイニングやデータセンターなど電力多消費型産業の誘致が議論されてきた。
パキスタン財務省は5月25日、ビットコインマイニングとAIデータセンターに2,000メガワット(MW)の電力を割り当てると発表。この取り組みは政府系機関「パキスタン暗号資産評議会(Pakistan Crypto Council:PCC)」の主導で、余剰電力の収益化、ハイテク雇用の創出、外国投資の誘致を目指す広範な戦略の一環であると説明された。
ただしパキスタンのエネルギー部門は、電気料金高騰や過剰発電能力などの課題を抱えているほか、太陽光発電の急速な普及で高コスト対策として代替エネルギー源に目を向ける消費者が増えたことで状況が一段と複雑化している。
参考:レポート
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