リップル社とSEC、控訴取り下げで法廷闘争が終結へ、共同和解申請の再却下受け

リップル裁判が終結へ

米リップル(Ripple)社CEOのブラッド・ガーリングハウス(Brad Garlinghouse)氏が、米証券取引委員会(SEC)への反対控訴(Cross-appeal)を取り下げると6月28日に発表した。同氏によるとSEC側もリップル社への控訴を取り下げる見込みとのこと。これによりリップル社とSECの約5年にわたる法廷闘争が完全終結に向かう見通しだ。

今回の控訴取り下げについては、リップル社とSECによる、訴訟の和解案承認を求める共同申立書が米連邦地裁判事アナリサ・トーレス(Analisa Torres)氏によって再却下されたことを受けての動きだ。

SECとリップル社は、XRP販売をめぐる長期にわたる訴訟の解決に向けて、「公共の利益」を理由にリップル社に対する恒久的差止命令(証券法に違反する機関投資家へのXRP等の販売を差し止める命令)の撤回と、1億2,503万ドルに上る民事制裁金の約60%削減(約5,000万ドルの支払い)を求めていた。

これについてトーレス判事は6月26日、「当事者同士の合意があったとしても連邦証券法違反が認定された事件における恒久的差止命令と民事罰を当事者の判断で無効化することは許されない」と指摘。またこうした申請が連邦民事訴訟規則 Rule 60(b) に基づく、「公共の利益を上回る例外的事情」に該当しないと判断が下され、共同申し立ては却下された。

この動きを受けて、リップル社のCLO(最高法務責任者)のスチュアート・アルダロティ(Stuart Alderoty)氏は、「今回の判断で、ボールは再び私たち側に戻ってきました。裁判所は、過去の機関投資家向け販売に関する判決に対する控訴を取り下げるか、それとも継続するかの二択を示しています。どちらを選ぶにせよ、XRPが証券ではないという法的地位に変わりはなく、我々の事業はこれまで通り継続していきます」と自身のXアカウントからコメント。今回ガーリングハウス氏は、この投稿を引用する形で、控訴取り下げを表明した。

なおこれによりリップル社は、支払い済みの1億2,503万ドルの罰金からの返還もなく、今後同社が、登録なしに証券的スキームでXRPや類似トークンを再び販売すれば、直ちに法的制裁の対象になるという制約が残った。

「リップル裁判」と呼ばれる、一連の訴訟問題は2020年12月にSECが提起したもの。リップル社によるXRPの販売が未登録証券取引に該当するとして、米証券法違反を問うものだった。2023年7月、トーレス判事はXRPの機関投資家向け販売については証券に該当すると判断し、リップル社の責任を一部認定。2024年8月には、恒久的差止命令および1億2,503万ドルの罰金を命じる最終判決(Final Judgment)を下していた。

これを受けてSECとリップル社は、2025年5月に控訴審の解消と資金分配を含む和解案に合意。しかし、同月の時点でトーレス判事はこの申し立てを「最終判決の後に行われた修正要求であり、適切な和解とは言えない」として却下していた。

その後、両者は6月12日にも共同で申請を行い、罰金をエスクロー口座から一部支払い、残額をリップル社に返還する案を提示。差止命令解除と民事制裁金の分配を求めたが再び退けられていた。

画像:Reuters

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
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ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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