SuccinctがイーサリアムブロックのリアルタイムZK証明を実現、ヴィタリックがL1実装の課題指摘

SuccinctがZK証明技術でイーサリアムブロックをリアルタイム証明

ゼロ知識証明(zero knowledge proof:ZKP)技術の開発企業「サクシンクト(Succinct)」が、イーサリアム(Ethereum)ブロックの90%以上を12秒以内でリアルタイム証明することに成功したと5月22日に発表した。なおこの技術は1年前まで「ムーンショット」と呼ばれる困難な目標とされていた。

「サクシンクト」のチームによると、この成果は暗号学、アルゴリズム、エンジニアリングの各分野でのブレークスルーによって実現されたという。開発チームは多線形多項式(multi-linear polynomials)に基づく全く新しい証明システムを設計・実装し、これが今後のzkVM(Zero-Knowledge Virtual Machine)の標準となる可能性があるとしている。

技術面では、パフォーマンスエンジニアがCUDAカーネル最適化を行い、LogUp GKRやsum checkなどのプリミティブを高速化したという。また、クラウドインフラチームが数百台のGPUでのベアメタル展開を調整し、分散システムを最適化して遅延を最小化したとのことだ。

なおCUDAカーネルとは、エヌビディア(NVIDIA)が開発した並列コンピューティングプラットフォームのCUDA上で並列実行される関数のこと。LogUp GKRは、LogUpとGKRの二つの技術を組み合わせた証明に利用されるシステムのこと。sum checkは、検証者が効率的に証明を検証可能にするプロトコルのことだ。

この発表に対し、イーサリアムの共同創業者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は、この成果を「ZK分野における大きなマイルストーン」と評価しつつも、レイヤー1(L1)での実用化には複数の課題があると指摘した。

ブテリン氏が挙げた課題は4つある。

1つ目は、現在のシステムは平均的なケースには対応しているものの、L1での安全な使用には最悪ケースの想定が必要であるためそれを想定する必要があること。

2つ目は、システムの形式的検証(formal verification)が完了していないということ。

3つ目は、証明に約100キロワットの電力が必要で、証明は1-of-n信頼モデルではあるものの、家庭でも実行可能な約10キロワット程度での実行は現状不可能であること。

4つ目は、イーサリアムのガスリミットを10倍から100倍に拡張する計画に対応するため、証明性能のさらなる向上が必要だということだ。

これを踏まえてブテリン氏は「ウマ・ロイ(Uma Roy)氏とチームの素晴らしい成果だが、最終的な目標達成にはまだいくつかのステップが残されている」と述べ、ZK技術のイーサリアムコアインフラへの完全統合には追加の研究開発が必要との見解を示している。 

画像:ethereum

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この記事の著者・インタビューイ

田村聖次

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
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