米SEC、新委員長が暗号資産規制の明確化を宣言

イノベーションを推進、スーパーアプリ構想も視野に

米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス(Paul S. Atkins)委員長は、5月19日にワシントンD.C.で開催された「SEC Speaks」カンファレンスにて初の基調講演を行い、暗号資産(仮想通貨)規制の方針転換を正式に表明した。

アトキンス委員長は、今後のSECはイノベーションの推進を重要な使命とするとし、暗号資産領域に積極的に関与する姿勢を示した。

アトキンス委員長は、過去のSECによるイノベーション支援の成功例として、1960年代の「ペーパーワーク危機」対応や、1990年代のETF(上場投資信託)の導入支援などを挙げた上で、現在の暗号資産市場はSECによる明確な規制がないまま長年放置されてきたと指摘。

SECはこれまで、暗号資産に対して「頭を砂に埋めるような政策」や「先に撃って後で質問する」ような強制執行重視のアプローチを取ってきたと批判し、規則が明示されないままの状況では市場の信頼は築けないとの姿勢を示した。

そのうえで、アトキンス委員長は、暗号資産に特化したルールの策定および証券・非証券を問わず統一的に扱える「統一ルールブック(Unified Rulebook)」の構築を提案。これにより、SECと商品先物取引委員会(CFTC)の二重管轄の問題解消と、規制の不透明性の払拭を目指す方針だ。

さらに、暗号資産の発行・保管・取引に関する明確なガイドラインの整備方針も明らかにした。具体的には、証券該当性の判断基準、適格なカストディアンの定義、取引プラットフォームに関する規制整備などが含まれる。

またアトキンス委員長は一般投資家によるプライベートファンドへの投資アクセス拡大にも言及。

SECは2002年以降、資産の15%以上をプライベートファンドに投資するクローズドエンドファンドに対して、最低初期投資額2万5,000ドルを設定し、適格投資家に限定して販売してきた。

委員長はこの規制を見直し、より多くの投資家に成長性の高い資産クラスへのアクセスを提供し、ポートフォリオの多様化を支援する方針を示した。

また、SEC内のイノベーション推進部門であるFinHubの再編にも言及。現在のFinHubは「機能が限定的で分離されている」とし、他部門との統合を進め、より効果的な政策形成体制を構築する意向を示した。

さらに、年間2億5,000万ドルの運用コストがかかっている「統合監査トレイル(CAT: Consolidated Audit Trail)」についても、コスト削減や報告要件の見直しを含む包括的な再評価を指示した。

今後SECは、証券と非証券の両資産を一つのプラットフォームで保管・取引可能にする「スーパーアプリ」構想の実現も目指すとしている。

講演の最後にアトキンス委員長は、「SECには新たな時代が到来した。投資家と市場のために成し遂げられる成果に期待している」と締めくくっている。

参考:発表
画像:Reuters

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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