米デジタル商工会議所がバイナンスを支持、SECへ訴訟取り下げ要求も

SECによる一方的な規制を問題視

米デジタル商工会議所(US Chamber of Digotal Commerce)が、大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)に対する訴訟を却下するよう米証券取引委員会(SEC)へ求める意見書を10月19日発表した。

米デジタル商工会議所は、ワシントンD.Cを拠点とした2014年設立の業界団体で、暗号資産とブロックチェーン技術を推進している。

バイナンスを支援する意見書にて同会議所は、SECによる一方的な規制はイノベーションを阻害し、市場参入者を海外に追いやっていると主張。SECが明確な規制のガイドラインを示さす、強制執行を行うことで、多くの個人や企業に多くの混乱と損害をもたらしていると述べた。

また同協会は、SECの不明瞭な規制のため、米国はブロックチェーン分野で他国に後れを取っていると述べ、現在の登録枠組みは、デジタル資産に関する多くのユースケースと商業的展開に適合していないと指摘。暗号資産取引所に、伝統的な証券や市場参加者に使用されている規制枠組みの下で登録することを要求することは、商業や消費者を弱体化させるだろうとの見解を示した。

また同会議所は、投資契約に関連するトークンはSECの管轄下にあることに同意しながらも、多くのトークンは最初の投資約束から切り離されると、証券として分類されるべきではないと主張。そのようなトークンの取引は単なる資産売却であると強調した。またトークン自体は「投資契約」ではないため、その資産が取引される場所は証券取引所に分類されるべきではないとの考えを同会議所は示している。

SECはバイナンスを複数の容疑で提訴しているが、その中の一つに、バイナンスが複数のデジタル資産を上場していることから未登録の証券取引所として運営されていることがある。

同会議所の意見は、このSECの主張に真っ向から反対する姿勢を示すものである。

また同会議所は意見書にて、憲法上の問題についても言及。SECの一方的な規制による強制行動は、三権分立とデュー・プロセスの原則に抵触する可能性があると主張している。

同会議所によれば、もしSECが証券の規制のみならず、投資契約の対象であった可能性のある資産を販売するビジネスまでも規制できるのであれば、SECの管轄権はAmazonなどのeコマースプラットフォームを含む通常の商品を販売する多くの市場や仲介業者に及ぶことになると指摘。

これがまかり通れば、SECは当初の権限を超え、アメリカのガバナンスを支える憲法規範を侵害する可能性があると主張した。

SECの規制範囲に対する疑問の声は他の業界関係者からもたびたび上がっている。

米大手暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)はSECに対し、明確な規制ルールを策定するよう繰り返し働きかけている。

6月には下院金融サービス委員会のパトリック・マクヘンリー(Patrick McHenry)委員長と、下院農業委員会のグレン・トンプソン(G.T. Thompson)委員長によって「デジタル資産市場構造討論草案」が提出された。

この草案は、規制の隙間を埋め、革新を促進することを意図して発表されたもので、投資契約の一部として提供される暗号資産は米証券取引委員会(SEC)の監督下に置き、商品として認められるものは米商品先物取引委員会(CFTC)の監督下に置くことを提案している。さらに、特定の暗号資産が証券に該当するか、商品と定義されるかは、SECの裁定で決定されるとし、判断基準は基礎となるブロックチェーンがどれだけ分散化されているかによって決まるとされている。

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参考:米デジタル商工会議所
デザイン:一本寿和

images:Reuters

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
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