米SEC委員長、XRPめぐるリップル裁判の判決に「失望」

判決に不服も一部には満足

米証券取引委員会(SEC)のゲイリー・ゲンスラー(GaryGensler)委員長は7月17日、米リップル(Ripple)社は連邦証券法に違反していないとする「リップル裁判」での判事の判決に「失望している」と述べた。

ゲンスラー委員長は、SECはまだ裁判の判決を評価中であるとしながらも、リップル社はXRPトークンを熟練した投資家に直接販売すべきでなかったとする判決の一部には満足していると述べた。

またゲンスラー委員長は、「SECのスタッフが、待望されている投資家向けの気候情報開示規則に現在も取り組んでおり、投資家と金融の安定にリスクをもたらすとする人工知能(AI)の規制に関する推奨事項を策定中である」と述べた。

SECは昨年3月、上場企業に温室効果ガス排出量などの気候関連リスクの開示を義務付けるSEC規則を提案している。

米国の判事は7月13日、リップル社がXRPを公的な販売所で販売しても連邦証券法に違反しないと裁定した。これは暗号資産(仮想通貨)業界にとって画期的な勝利となった。

この判決は今回のケースに限ったものだが、SECと争っている他の暗号資産企業にとっては自社商品が規制当局の管轄下に入るかどうかをめぐる判断材料となりそうだ。

SECはここ数ヶ月、暗号資産のほとんどが証券であり、SECに登録されるべきであると主張し、多くの暗号資産企業を提訴している。

またゲンスラー委員長によると、予測分析や機械学習といったテクノロジーの利用によってもたらされる金融安定性への課題に立ち向かうために、SECは「新しい考え方」を必要とするだろうと述べた。

今回のゲンスラー委員長の発言は、「責任ある」イノベーションを推進する一方で、新たなテクノロジーが公共の安全にもたらす脅威を管理しようとする米国政府の広範な取り組みの一環だ。

もし取引プラットフォームのAIシステムがプラットフォームとその顧客の両方の利益を考慮するならば、「これは利益相反につながる可能性がある」とゲンスラー委員長は述べている。

AIはまた、世界の金融システムの相互接続性を増幅させる可能性があり、現在のリスク管理モデルでは対応できないかもしれない、ともゲンスラー委員長は指摘。

「AIが将来もたらすかもしれない金融の安定に対する挑戦の多くは……システム全体またはマクロ的なプルデンシャル政策介入に関する新しい考え方を必要とするだろう」と続けた。

ゲンスラー委員長の発言は、ここ数ヶ月の金融におけるAIの利用によって生じるリスクの管理に関する発言と重なる。

SECの新規制策定に関する最新のアジェンダによるとSECは、投資アドバイザーやブローカー・ディーラーによるAIや機械学習の利用における利益相反の可能性を管理するため、今年後半に発表される可能性のある規則案を検討している。

また、温室効果ガスの排出量と気候変動リスクに関する企業の投資家への情報開示に関する規則の最終化時期についても更新され、10月に決定される可能性があるとしている。しかしゲンスラー委員長は、これは確定的なものではないと述べた。

ゲンスラー委員長は「まだやることがある」と述べ、「いつになるかはわからない。スタッフの準備が整い、SECの準備が整ったときがそのときだ」とコメントしている。

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    ※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
    US securities regulator ‘disappointed’ with defeat over Ripple’s XRP WASHINGTON
    Reporting by Douglas Gillison, Andrea Shallal and Hannah Lang in WashingtonEditing by Matthew Lewis, David Evans and Nick Zieminski
    翻訳:髙橋知里(あたらしい経済)
    images:Reuters

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    髙橋知里

    「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
    同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
    同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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    同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
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