アービトラム「ARB」は「2030年に10ドル」=スタンダードチャータード予測

スタンダードチャータードがARB価格を2030年10ドルと予測

英金融大手スタンダードチャータード(Standard Chartered)が、イーサリアム(Ethereum)のレイヤー2(L2)「アービトラム(Arbitrum)」の独自トークン「ARB」の価格が2030年末までに10ドル(約1,553円)へ上昇するとの予測を示した。アービトラム財団(Arbitrum Foundation)の投資戦略責任者ブレンダン・マー(Brendan Ma)氏が、同行の顧客向けレポートの一部を自身のXアカウントで9月15日に公開した。

同レポートは「アービトラム:ザ・ブロックチェーン・フォー・トラッドファイ(Arbitrum – The blockchain for TradFi)」と題され、スタンダードチャータードのデジタル資産リサーチ部門グローバル責任者ジェフ・ケンドリック(Geoff Kendrick)氏が執筆した。

レポートでは、ARBの価格について今年末に0.50ドル(約78円)、2027年末に1.50ドル(約233円)、2028年末に3.50ドル(約544円)、2029年末に6.50ドル(約1,010円)、2030年末に10ドルと予測している。レポート作成時のARB価格は約0.14ドル(約22円)で、2030年末の予測は約70倍に相当する。

スタンダードチャータードがアービトラムを評価する理由の1つが、銀行や証券会社などの伝統金融(TradFi)事業者のオンチェーン移行を支援するビジネスモデルだ。同レポートでは、アービトラムを米コインベース(Coinbase)が支援するL2「ベース(Base)」と並ぶ主要なL2と位置付けている。

L2とは、イーサリアムなどの基盤となるブロックチェーンの外部で取引を処理し、その結果を基盤側に記録することで、処理能力の向上や手数料の低減を図る仕組みだ。アービトラムは主要L2「アービトラムワン(Arbitrum One)」に加え、企業やプロジェクトが同エコシステムの技術を利用して独自チェーンを構築できる基盤も提供している。

アービトラムの技術を利用して構築され、アービトラムワンなどの外部で決済するチェーンは、「アービトラム・エクスパンション・プログラム(Arbitrum Expansion Program:AEP)」に基づき、純プロトコル収益の10%をアービトラムエコシステムへ還元する。純プロトコル収益のうち8%はアービトラムDAO(Arbitrum DAO)のトレジャリー、2%は開発者支援組織「アービトラム・デベロッパー・ギルド(Arbitrum Developer Guild)」へ配分される。

この収益モデルの事例としてスタンダードチャータードが挙げたのが「ロビンフッドチェーン(Robinhood Chain)」だ。ロビンフッドチェーンは、米投資アプリ運営企業ロビンフッド(Robinhood)がアービトラムの技術スタックを利用して構築したL2で、今年7月1日にメインネットを公開した。

ロビンフッドは2025年6月、EUの対象顧客向けに米国株やETFへのエクスポージャーを提供する第1世代の「ストックトークン」をアービトラムワン上で提供開始した。今年7月には、ロビンフッドチェーン上で新たなストックトークンの提供を開始している。

スタンダードチャータードは、ロビンフッドチェーンのTVL(預かり資産総額)を約15億ドル(約2,330億円)としている。またレポートでは、約2億ドル(約311億円)規模のストックトークンのうち、約1億7,000万ドル(約264億円)がロビンフッドチェーン、約3,000万ドル(約47億円)がアービトラムワンに存在すると説明されている。

ロビンフッドチェーンの手数料収益は9月初旬に1日800万ドル(約12.4億円)を超え、9月前半の1日平均は約280万ドル(約4.3億円)となったとのこと。スタンダードチャータードは、この水準が続いた場合、9月のAEP関連収益が約500万ドル(約7.8億円)になると試算している。これはロビンフッドチェーン稼働前のアービトラムの月間収益と比べて5倍以上の水準となる。

同行はロビンフッドチェーンの初期の成長を踏まえ、他の伝統金融事業者がアービトラムの技術スタックを利用して独自チェーンを構築する可能性も高まったと分析している。

トークン化株式市場を2028年に7,500億ドルと予測、ARBへの価値還元は課題

こうした需要拡大の前提として、スタンダードチャータードはステーブルコインとそれ以外の現実資産(RWA)を含むトークン化資産市場がレポート時点の約3,400億ドル(約52.8兆円)から2028年末までに4兆ドル(約621.2兆円)へ拡大すると予測している。このうちトークン化株式市場については、約30億ドル(約4,659億円)から約250倍となる7,500億ドル(約116.5兆円)への成長を見込む。

スタンダードチャータードは、株式などの資産のトークン化が進むにつれ、それらを扱うブロックチェーンへの需要も拡大するとみている。一方、トークン化株式市場でどのブロックチェーンが最大のシェアを獲得するかは不透明であり、アービトラムが得られる収益を予測することは難しいとの見方も示している。

また、アービトラムの収益増加がそのままARBの価値上昇につながるわけではない。ARBはアービトラムDAOの運営方針などに関する投票に利用されるガバナンストークンで、現在はアービトラムのプロトコル収益をARBの価値へ直接還元する仕組みがない。

スタンダードチャータードは、アービトラムの手数料収益を「再投資される利益」のようなものと位置付けている。またエコシステムの成熟に伴い、トークン買い戻しプログラムが導入される可能性もあるとの見方を示した。

一方、同レポートはARBの価格予測に対するリスクとして、資産トークン化が想定より遅く進むことや、トークン化資産の獲得を巡る他のブロックチェーンとの競争激化を挙げている。

画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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