米上院、クラリティ法案の審議入りへ前進。9/15に手続き採決へ

渡邉洋輔

9月15日に審議入り巡る採決

米上院は9月15日、暗号資産(仮想通貨)市場の包括的な規制枠組みを整備する「クラリティ法案(CLARITY Act、H.R.3633)」の本会議審議入りを巡り、手続き採決を行う予定だ。

採決の対象は法案そのものではなく、法案を本会議で審議するための「審議入り動議」に対する討論終結動議(クロージャー動議)だ。米上院の公式日程によると、採決は米東部時間9月15日午後2時15分(日本時間16日午前3時15分)に予定されている。

上院多数党院内総務のジョン・スーン(John Thune)議員は、8月の議会休会入り直前、審議入り動議についてクロージャーを申し立てた。上院では議員が討論を続けることで採決を遅らせられるため、法案を次の段階へ進めるには、討論時間を制限する手続きが必要になる場合がある。

クロージャー動議の可決には通常、上院議員の5分の3に当たる60票が必要となる。動議が可決された場合も直ちに法案本体の審議が始まるわけではなく、最大30時間の討論を経て審議入り動議が採決される。審議入り動議が可決されれば、法案本体の審議や修正案の検討に進むことになる。

したがって、9月15日に予定されているのは法案の可否を決める最終採決ではなく、本会議での審議開始に向けた手続き採決となる。

クラリティ法案は、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)のデジタル資産に対する管轄を整理し、デジタル資産取引所やブローカー、ディーラーなどに対する連邦レベルの規制枠組みを整備することを目的とした法案だ。

同法案は2025年7月、米下院で賛成294票、反対134票で可決された。2025年7月に成立した決済用ステーブルコインの規制法「ジーニアス法(GENIUS Act)」に続く、米国の主要な暗号資産関連法案として上院で審議が進められている。

上院銀行委員会は2026年5月14日、クラリティ法案を賛成15票、反対9票で可決した。共和党議員に加え、民主党のルーベン・ガレゴ(Ruben Gallego)議員とアンジェラ・アルソブルックス(Angela Alsobrooks)議員が賛成票を投じ、超党派での可決となった。

その後は、政府高官らによる暗号資産関連事業との利益相反を巡る倫理規定や、ステーブルコインの利回り、不正資金対策などについて与野党間の調整が続いていた。

7月22日には、共和党のシンシア・ルミス(Cynthia Lummis)上院議員が、上院銀行委員会と農業委員会の作業を統合した616ページの更新草案を公表した。ただし、これは上院が正式に採択した修正法案ではなく、超党派交渉に向けた更新草案という位置付けだ。

更新草案の公表後も、倫理規定やステーブルコインの利回りなどを巡る与野党の隔たりは埋まらず、8月の議会休会前に手続き採決を行うには至らなかった。

暗号資産政策を取材するジャーナリストのエレノア・テレット(Eleanor Terrett)氏によると、スーン議員の事務所は事前に暗号資産業界関係者へ、休会前にクロージャーを申し立てる意向を伝えていたという。

暗号資産メディア「ザ・ブロック(The Block)」は、スーン議員が、民主党が休会前の採決に反対したため手続き上の採決が9月にずれ込むとの見通しを示し、休会明けの早い段階で取り上げる意向を明らかにしたと報じている。

焦点は倫理規定とステーブルコイン利回り

本会議審議に向けた日程は設定されたものの、法案成立に向けた与野党間の調整は終わっていない。クロージャー動議の可決には通常60票が必要で、共和党だけでは必要票数に届かない。さらに一部の共和党議員も、銀行預金への影響などを巡り現行案に懸念を示しており、超党派の支持を確保できるかが焦点となる。

主要な争点の一つが、政府高官らと暗号資産関連事業との利益相反を防ぐための倫理規定だ。

5月の上院銀行委員会で法案に賛成したガレゴ議員とアルソブルックス議員は、委員会での賛成が本会議での支持を保証するものではないと説明している。両議員は、本会議で支持するには倫理規定や不正資金対策などの修正が必要との立場を示している。

7月の更新草案には、大統領や副大統領、連邦議会議員らが在任中、対価と引き換えにデジタル資産を発行またはスポンサーすることを禁止する規定が盛り込まれた。司法長官が執行を担う仕組みも定められているが、規制の対象範囲や執行方法が不十分だとして民主党側から反発が出ており、最終的な超党派合意には至っていない。

もう一つの主要な争点が、ステーブルコインを巡る利回りや報酬の取り扱いだ。

2025年に成立したジーニアス法は、決済用ステーブルコインの発行体が、保有などにのみ結び付く利息や利回りを保有者へ提供することを禁止した。一方、暗号資産取引所など発行体以外の第三者が提供する報酬については直接禁止しておらず、その取り扱いがクラリティ法案を巡る論点となっている。

5月に上院銀行委員会で可決された案は、銀行預金の利息と経済的または機能的に同等とみなされる報酬を禁止する一方、決済や送金、流動性提供など、実際の活動に基づく報酬には一定の余地を残す構成となっていた。7月の更新草案にも同様の考え方が盛り込まれている。

一方、銀行業界は、第三者による報酬を認めれば利回り付きステーブルコインが銀行預金の代替となり、預金流出を招く可能性があると懸念している。テレット氏は、銀行業界による共和党議員への働きかけを受け、ステーブルコインの利回りが再び主要な争点になっていると伝えている。

上院は、形式的な会合を除いて9月14日に休会明けとなる予定だ。翌15日のクロージャー採決は、クラリティ法案が本会議審議へ進めるかを占う最初の関門となる。

ただし、クロージャー動議が可決されても法案の上院通過が決まるわけではない。その後も審議入り動議や法案本体、修正案に関する採決が必要となる。倫理規定やステーブルコインの利回り、不正資金対策を巡って超党派の合意を形成できるかが引き続き焦点となる。

参考:米上院プレスギャラリーザ・ブロック
画像:PIXTA

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渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。