アービトラムで「ArbOS Elara」アップグレード稼働、専用チェーンに規制対応の取引フィルタリング機能

専用チェーンにプロトコルレベルのコンプライアンス機能

イーサリアム(Ethereum)のL2ネットワーク「アービトラム(Arbitrum)」で、「ArbOSエララ(ArbOS Elara)」アップグレードが稼働開始した。アービトラムが8月21日に公式Xで発表した。

「ArbOS」は、アービトラムのネットワークで取引処理などを担うソフトウェアだ。今回のエララでは、アービトラムの技術を利用して構築する専用ブロックチェーン向けの新機能と、主要ネットワーク「アービトラム・ワン(Arbitrum One)」向けの改善が実施された。エララは事前にアービトラムDAO(ArbitrumDAO)のガバナンスで承認されている。

アービトラムでは、企業やプロジェクトがアービトラムの技術基盤を利用し、用途に応じた独自のブロックチェーンを構築できる。こうした専用ブロックチェーンでは、広く一般に利用されるアービトラム・ワンとは異なり、運営者が用途に応じた独自のルールを設定できる。

今回のアップグレードでは、アービトラムの専用ブロックチェーン向けに、任意で有効化できるプロトコルレベルのコンプライアンス・フィルタリング機能が追加された。同機能は初期状態では無効で、利用にはチェーン運営者による設定と有効化が必要となる。金融機関などが規制対象となる商品をブロックチェーン上で取り扱う場合、制裁対象者などとの取引を制限する必要が生じる。

今回追加された機能は、こうした規制要件に応じて、チェーン運営者が独自のポリシーを設定し、条件に該当するトランザクションを実行前にフィルタリングできる仕組みだ。アプリケーション側で取引を制限するのではなく、ブロックチェーンの基盤となる仕組みに取引制限を組み込める。

具体的には、チェーン運営者が設定したポリシーをシーケンサーと状態遷移関数(STF)に適用する。シーケンサーはユーザーから送られたトランザクションを受け取り、その処理順序を決める役割などを担う。状態遷移関数は、トランザクションに基づいてブロックチェーンの状態を更新する仕組みだ。

エララのガバナンス提案には、外部のコンプライアンスサービスと連携する仕組みも盛り込まれた。同サービスと連携してアドレス単位のポリシーを設定し、制限対象となるアドレスに関連するトランザクションをフィルタリングする仕組みだ。制裁対象となった組織や人物などのオンチェーン活動を制限する必要がある専用ブロックチェーンでの利用が想定されている。

またチェーン運営者は、フィルタリングされたトランザクションの記録をAPI経由で取得し、内部レビューや監査に利用できる。アービトラム側は、企業が専用チェーンの柔軟性や制御性を維持したまま、規制に対応したオンチェーン商品を提供しやすくなると説明している。

なお、このコンプライアンス・フィルタリング機能は、アービトラム・ワンや「アービトラム・ノヴァ(Arbitrum Nova)」では有効化されていない。同機能は、一般に利用されるアービトラム・ワンなどの取引を新たに制限するものではなく、企業などが構築する専用ブロックチェーンで必要に応じて利用できる。

専用ブロックチェーン向けにはこのほか、優先手数料を徴収できる機能も追加された。チェーン運営者は、優先手数料の徴収を有効化し、シーケンサーの並べ替えロジックを更新することで、ユーザーが設定した追加手数料をトランザクションの処理順序に反映できる。また、外部のデータ可用性サービスと接続するためのAPIも追加された。

アービトラム・ワンでは手数料調整やスタイラスを改善

一方、アービトラム・ワンでは、ネットワークの最低ベースフィーを従来より迅速に調整できる仕組みが導入された。ネットワークの利用状況などが変化した際に、取引手数料の基準となる最低価格を一定の範囲内で素早く調整できるようにする。

具体的には、「ベースフィー・マネージャー(BaseFeeManager)」コントラクトを導入し、アービトラムの開発元オフチェーン・ラボ(Offchain Labs)が、アービトラムDAOの承認した0.01〜0.10gweiの範囲で最低L2ベースフィーを調整できる。同社に与えられる権限は限定的で、メインネットでの有効化から2年後に失効する。調整する場合はアービトラムのフォーラムで事前に公表される。

なお今回の変更によって、アービトラム・ワンの手数料が自動的に引き上げられるわけではない。今回導入された仕組みは、将来のネットワーク状況に応じて、ユーザーが負担するコストやスパム対策、ネットワーク活動、手数料収入などのバランスを調整するためのものだ。

また、Rustなどを利用してスマートコントラクトを開発できる「スタイラス(Stylus)」では、コントラクトコードのサイズ上限が24KBから96KBへ4倍に拡大された。これにより、開発者は従来より規模の大きなアプリケーションを構築しやすくなる。特に大規模なRustライブラリを利用する場合、アプリケーションを複数のコントラクトに分割する必要性を減らせる。

参考:アービトラム
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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