イーサリアム財団、ポスト量子セキュリティの専用サイト公開

8年超の研究成果を集約

イーサリアム財団(Ethereum Foundation:EF)が、イーサリアムのポスト量子セキュリティに関する専用サイト「pq.ethereum.org」を3月25日に公開した。EF内の複数チームが連携して立ち上げたもので、これまでの研究成果や今後の設計指針が一般公開されている。

今回の取り組みは、2018年に始まったSTARKベースの署名集約に関する初期研究に端を発する。EFのポスト・クオンタム(Post-Quantum)チームおよび暗号技術チームは、プロトコルアーキテクチャチームとプロトコルコーディネーションチームの支援を受けながら、8年以上にわたり研究を進めてきた。

これらの成果はすべてオープンソースとして公開されており、分散型プロトコルの長期的な安全性確保に向けた基盤として位置づけられている。

公開されたサイトでは、ポスト量子化がイーサリアムの各プロトコルレイヤーに与える影響について体系的に解説されている。

具体的には、エクスキューション・レイヤー(Execution Layer)、コンセンサス・レイヤー(Consensus Layer)、データ・レイヤー(Data Layer)の各層において、段階的な移行を前提とした設計方針が示されており、単一のアップグレードではなく、長期的かつ協調的な移行プロセスとして位置づけられている。

また、ネットワークの安定性を維持しながら暗号プリミティブを更新する「暗号的柔軟性(cryptographic agility)」が重要な設計思想として掲げられている。

「pq.ethereum.org」では、ポスト量子対応に向けた設計指針としてのロードマップ(strawmap.org)に加え、GitHubリポジトリ、仕様書、論文、EIPといったオープンリソースがまとめられている。

さらに、ポスト・クオンタムチームが執筆した5カテゴリ14問のFAQや、ゼロ知識証明分野のポッドキャストZero Knowledge FMとの連携による6部構成のインタビューシリーズも掲載されている。

サイト上では、2026年10月9日から12日にかけて英国ケンブリッジで開催予定の「第2回Post-Quantum Research Retreat」の参加登録も受け付けられている。

同イベントでは、暗号理論や新たな署名方式、形式検証などを扱う研究者向けトラックに加え、マルチクライアント環境での実装や相互運用性検証、devnet開発などをテーマとした開発者向けトラック、さらにリスク評価や移行戦略を議論する機関向けトラックが設けられる。

実装面では、10以上のクライアントチームが「PQ Interop」を通じて開発ネットワーク(devnet)の構築とリリースを継続的に進めており、研究段階にとどまらない実装および相互運用性の検証が進展している。

量子コンピュータの進展により、将来的に現在の公開鍵暗号が破られる可能性が指摘されている。EFは、こうしたリスクに先行して対応するため、長期的な視点でポスト量子移行を進める方針だ。

今回の専用サイト公開は、その取り組みを体系的に整理し、開発者や研究者、コミュニティに広く共有するものと位置づけられる。

参考:pq.ethereum.org
画像:PIXTA

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

合わせて読みたい記事

イーサリアム系研究開発組織、ウォレット復旧機能「ソーシャルリカバリーSDK」公開

イーサリアム(Ethereum)エコシステムにおけるプライバシー技術の研究開発を行うプライバシー・スチュワーズ・オブ・イーサリアム(Privacy Stewards of Ethereum:PSE)が、スマートウォレット向けの復旧機能「ソーシャルリカバリーSDK(Social Recovery SDK)」の設計および実装について解説するブログ記事を、3月2日に公開した