米SECがコインベースへ提訴前にビットコイン以外の取引停止を要請か、担当者は報道を不正確と指摘も

ビットコイン以外の取引停止を要求していた

米証券取引委員会(SEC)は6月、米大手暗号資産(仮想通貨)取引所のコインベース(Coinbase)を提訴する前に、ビットコイン(BTC)を除くすべての暗号資産の取引を停止するようコインベースに要請していたようだ。フィナンシャル・タイムズ(FT)紙がコインベースのCEO兼共同創設者のブライアン・アームストロング(Brian Armstrong)氏の話として7月31日報じた。

なおこの報道については、コインベースの広報担当者が「不正確である」とコメントしたことが、海外web3メディアのブロックワークス(Blockworks)にて8月1日報じられている(下記参照)。

7月31日のFT紙の報道によると、アームストロング氏は「あの時点では、選択の余地はありませんでした。ビットコイン以外のすべての資産を上場廃止にすることは、法律で定められていることではありませんが、実質的に米国における暗号資産業界の終焉を意味するものでした」と語っていたとのこと。

「それは簡単な選択でした…法廷に行き、裁判所が何と言うか見極めましょう」とアームストロング氏は続けている。

SECはコインベースが未登録で取引所を運営しているとして、これが違法運営にあたると非難していた。またコインベースは、ソラナ(SOL)、カルダノ(ADA)、ポリゴン(MATIC)などのトークンを含む、登録されるべき証券である、少なくとも13の暗号資産を取引していたと主張した。

SECはFT紙に対し、執行部門が「暗号資産の上場廃止」を企業に正式に要請することはないと述べた。

FT紙はSECの言葉を引用し、「調査の過程で、スタッフは、証券取引法の下で委員会に問題を提起する可能性のある行為について独自の見解を示すことがある」と述べている。

FT紙の報道に対しコインベースの広報担当者は、SECがビットコイン以外のすべての資産が証券であるという立場を示したことはなく、SECのスタッフは委員会全体の投票なしに記事で示唆されているような正式な要請を行うことはないと述べた。

またコインベースの広報担当者は「私たちはSECとの協議を続けているが、透明で公正なルールメイキングと議会の措置が、米暗号資産ユーザーと暗号資産経済を構築している米国企業にとって最善の道であると信じている」と広報担当者は付け加えた。

SECは6月に大手暗号資産取引所バイナンス(Binance)を提訴しており、両訴訟はSECのゲイリー・ゲンスラー(GaryGensler)委員長が暗号資産業界に対する管轄権を主張する一環として行われた。

ゲンスラー委員長は、暗号資産業界を米国の資本市場に対する投資家の信頼を損ねる「ワイルド・ウェスト(西部開拓時代)」と位置づけている。暗号資産取引業者は、SECの規則は不明瞭であり、SECが規制しようとしているのは行き過ぎだと述べている。

SECはロイター通信の取材に対し、すぐにはコメントに応じなかった。

同報道にコインベースが「不正確な表現」と反応

コインベースはこのFT紙の報道について、重要な文脈を省略し、不正確な表現を用いた報道であるとブロックワークスに8月1日語った。

報道によればコインベースの広報担当者は、SECが訴訟に先立って特定の暗号資産の上場廃止を要求したことはなく、記事内でSECもそのことを認めているとコメントしたという。

またコインベースはFT紙の報道について、SECとの会話に関する重要な文脈を省略したものであり、「SECがコインベースに取引停止を命じたことを暗示している」と指摘。

元記事ではアームストロング氏がFT紙に対し、SECが「ビットコイン以外のすべての資産は証券だ」と述べた後、ビットコイン以外のすべての資産を上場廃止にする必要があると述べたとされていた。

しかしコインベースの広報担当者によれば、このような要請はSECスタッフの多数決を経てのみ行うことができると主張。

SECの広報担当者もスタッフが暗号資産の上場廃止を企業に求めることはないとし、調査の過程で、証券取引法に照らした際に、どのような行為がSECに疑問を投げかける可能性があるかについて、職員が独自の見解を共有することはあると述べている。

なおアームストロング氏は記事執筆時点(2023年8月1日13:30)、このFT紙の報道についてツイートなどの反応は見せず、沈黙している状況だ。

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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
SEC asked Coinbase to trade only in bitcoin before suing crypto exchange -FT
Reporting by Juby Babu in Bengaluru; additional reporting by Kanjyik Ghosh and Rishabh Jaiswal; Editing by Sonia Cheema, Savio D’Souza and Anil D’Silva
翻訳:髙橋知里(あたらしい経済)
images:Reuters

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髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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