テザーの「ハドロン」、トークン化証券の発行強化に向け2社と提携

テザーがトークン化証券の発行流通基盤を強化へ

米ドル建てステーブルコイン「USDT」発行元のテザー(Tether)の資産トークン化プラットフォーム「ハドロン(Hadron)」、資産運用企業クレインシェアーズ(KraneShares)、トークン化証券取引基盤を提供するビットフィネックス・セキュリティーズ(Bitfinex Securities)の3者による戦略的提携が11月6日に発表された。

今回の提携により3者は、伝統的な金融商品をブロックチェーンベースの市場へ接続し、トークン化証券の発行および流通基盤を強化するという。トークン化証券市場は2025年時点で約300億ドル(約4兆5,000億円)規模とされ、2030年までに約10兆ドル(約1,500兆円)規模へ拡大するとの試算がある。

ハドロンは、株式、債券、コモディティ、ファンドなどの資産をデジタルトークンとして発行するための技術基盤を提供する。一方、ビットフィネックス・セキュリティーズは、エルサルバドルの国家デジタル資産委員会(CNAD)の認可を受けたトークン化証券取引プラットフォームを運営しており、規制準拠した発行・取引および二次市場の流動性供給に対応する。クレインシェアーズは、米国で上場されている中国関連のETF(上場投資信託)を運用する資産運用企業で、新たにトークン化ETFの構築や市場アクセス手段の拡張に向けた取り組みを進めるという。

今回の協業により、3者はトークン化された金融商品に対する機関投資家需要の検証、商品構造の設計、流通スキームの構築などを共同で進めていくとしている。

トークン化証券は、決済効率やクロスボーダーでのアクセス向上などの利点から注目が高まっている一方、市場の信頼性確保や規制枠組みの整備が課題とされている。今回の提携は、エルサルバドルのデジタル資産規制体制を基盤としつつ、国際的な投資家参加を促す取り組みの一環とみられる。

現実の金融商品をブロックチェーン上で取引可能にする「トークン化(Tokenization)」の動きが世界的に進んでいる。

スイスの金融大手ユービーエス(UBS)は11月4日、チェーンリンク(Chainlink)の「デジタル・トランスファー・エージェント(DTA)」を活用し、トークン化された投資信託「uMINT」の申込から償還までの処理を実運用環境でオンチェーン完結させた。

日本では、SBIホールディングスなどが参加するコンソーシアムが、上場株式をトークン化し、最低1円から24時間365日取引可能にする仕組みの導入を2026年に向けて検討している。プログマ(Progmat)が制度設計およびワークフロー構築を進めている。

また今月、米資産運用会社フランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)がトークン化マネーマーケットファンドを香港の機関投資家向けに提供開始したと複数のメディアが報じている。

このように現実資産のトークン化の流れは投信、株式、MMFなど対象資産は広がっている。現実資産のトークン化は市場アクセス改善や決済効率に優位性が見込まれる一方、規制整備やチェーン間相互運用性の確保が引き続き課題となっている。

参考:テザー
画像:iStocks/Makalo86・noLimit46

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あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

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