共有シールドプール導入を提案
イーサリアム(Ethereum)で予定されているアップグレード「ヘゴタ(Hegota)」の候補提案として、プライベート送金機能を実現する「EIP-8182」がPFI(Proposed for Inclusion)に追加された。提案者のトム・レーマン(Tom Lehman)氏が6月11日に報告した。なお同ネットワークの次期アップグレードは「グラムステルダム(Glamsterdam)」だ。
レーマン氏によると、EIP-8182はPFIとして登録された。PFIはアップグレードへの採用候補として検討される提案を指しており、現時点で実装が決定したわけではない。今後、イーサリアム開発者会議などで議論が進められる見込みだ。
EIP-8182は、ETHおよびERC20トークンのプライベート送金を可能にする改善提案だ。同提案では、イーサリアム上に共有の「シールドプール(Shielded Pool)」をシステムコントラクトとして導入し、プライベート送金のための共通基盤を導入することを目指している。
レーマン氏は、現在のイーサリアムでは年間数千億ドル規模の取引が行われている一方、そのほぼすべてが公開されていると指摘している。同氏は、給与支払いや寄付、トレジャリー管理などの用途では取引相手や金額が公開されないことが一般的であり、イーサリアムにもプライバシー機能が必要だと主張している。
また同氏は、「レイルガン(Railgun)」や「プライバシープールズ(Privacy Pools)」などのプライバシー機能を提供するプロトコルは存在するものの、利用者が複数のプロトコルへ分散することで匿名性が低下する課題があると説明している。
そのためEIP-8182では、イーサリアム全体で共有される単一のシールドプールを導入することで、すべてのウォレットやアプリケーションが同じ匿名性セット(Anonymity Set)を共有できるようにすることを目指している。
提案によると、ユーザーは既存のイーサリアムアドレスやENS名を起点に、ウォレットが受取人の秘匿識別子へオフチェーンで解決する形でプライベート送金を行える。また、シールドプール内の資産を一時的に公開状態へ戻して分散型取引所(DEX)などを利用した後、再びプールへ戻すことも想定されている。ただしこの場合、公開状態で行うスワップなどの外部取引自体はオンチェーン上で観測可能となる。
なお同提案では、資産の預け入れや引き出し時にはトークンの種類や数量、利用アドレスが公開される一方、シールドプール内で行われる送金については送信者、受取人、送金額を秘匿する設計が採用されている。
なお近年はオンチェーンプライバシー機能への関心が高まっている。スタークネット(Starknet)は6月9日、ERC20トークン向け秘匿送金機能「STRK20」を公開した。一方でEIP-8182は、個別のアプリケーションやレイヤー2ではなく、イーサリアムL1のハードフォークを通じて共有プライバシー基盤を導入することを目指している点が特徴だ。
なおイーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は2025年、既存ウォレットへプライバシー機能を統合する必要性について言及していた。EIP-8182は、こうしたイーサリアムコミュニティ内のプライバシー強化の流れの中で議論されている提案の一つとなる。
EIP-8182: Private ETH and ERC-20 Transfers is now officially Proposed for Inclusion (PFI) in Hegotá!
— Tom Lehman (@dumbnamenumbers) June 10, 2026
If you support privacy on the L1, write your favorite ACD a letter! (And in the letter say that they should consider EIP-8182!) pic.twitter.com/aIRefLSoyX
— Tom Lehman (@dumbnamenumbers) April 23, 2026
参考:EIP
画像:PIXTA