ステーブルコイン「deUSD」がサービス終了、Stream Financeの損失問題を受け全額償還へ

Elixirが「deUSD」のサービス終了を決定

分散型流動性プロトコル「エリクサー(Elixir)」提供の合成ドルステーブルコイン「deUSD」のサービス終了が11月6日に発表された。この決定は、DeFi(分散型金融)プロトコル「ストリームファイナンス(Stream Finance)」が外部ファンドマネージャーによる9,300万ドル(約140億円)の損失を開示し、11月4日に出金停止したことを受けてのものだ。

この発表時点で、deUSD保有者の80%の償還処理が完了したとのこと。残りの保有者についても、残高のスナップショットを取得済みで、クレームポータルが開設され次第、1対1でUSDCと交換できる予定だという。なおストリームファイナンスはdeUSD供給量の約90%(約7,500万ドル/約113億円)を保有しており、エリクサーもモルフォ(Morpho)経由でストリームファイナンス向けに貸付を行っていたため、同プロトコルへのエクスポージャーが大きくなっていた。

deUSDは2024年半ばにローンチされた合成ドル資産で、エセナラボ(Ethena Labs)の合成ドル「USDe」に対する「真に分散化された」非カストディアル型の代替手段として位置付けられていた。deUSDは担保資産としても利用され、ハミルトンレーン(Hamilton Lane)のトークン化ファンド「HLSCOPE」の裏付け資産の一部にも採用されていた。

ストリームファイナンスは自社ステーブルコイン「xUSD」を支えるためにdeUSDを借り入れていた。しかし現在xUSDの取引価格は0.20ドル未満まで下落しており、このディペッグ(価格乖離)が他プロトコルにも波及している。特にステーブルラボ(Stable Labs)の「USDX」トークンへの影響が大きいとされる。

エリクサーは11月6日付でdeUSDのミント(発行/鋳造)および償還インフラを停止し、順次プロトコルとしての提供を終了する方針だ。AMM(自動マーケットメイカー)プールや貸出市場でdeUSDにエクスポージャーを持つLP(流動性提供者)についても、ポジション全額の請求が可能だと説明されている。同プロトコルによれば、貸出ポジションの99%以上はストリームファイナンス向けであり、同社がローン返済やポジション解消を行わない方針を示したことから、エリクサーはオイラー(Euler)、モルフォ、コンパウンド(Compound)および関係者と連携し、ストリームファイナンス向けローン返済の分配とポジション清算を進めるとしている。

クレームポータルは11月6日に開設され、イーサリアム(Ethereum)メインネット上で利用可能となった。第1段階のUSDC請求対象には、メインネット、アバランチ(Avalanche)、プルーム(Plume)、ワールドチェーン(Worldchain)、プラズマ(Plasma)上のdeUSD保有者およびステーキング参加者が含まれる。スイ(Sui)やセイ(Sei)の保有者、カーブ(Curve)、ドラゴンスワップ(Dragonswap)、バランサー(Balancer)などAMMでのLPポジションについては、順次対応が追加される予定だ。

エリクサーは声明で、「deUSDにはもはや価値はなく、本ステーブルコインはサービスを終了した。AMMでの取引を含め、deUSDの購入や新たな投資は行わないでほしい」と警告している。同プロトコルは当初、ストリームファイナンスに対する唯一の債権者として「1ドルでの完全償還」を見込んでいたが、ストリームファイナンス側が返済およびポジション解消を行わない決定を下したことで、その前提は崩れたと説明している。 

参考:償還用ページ
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

田村聖次

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
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