イングランド銀行、ステーブルコイン保有限度に例外措置を検討=報道

イングランドでステーブルコイン規制の緩和が進む

イングランド銀行(BOE)が、企業や暗号資産(仮想通貨)取引所に適用予定のステーブルコイン保有上限に対して、例外措置を設ける方向で調整していると「ブルームバーグ(Bloomberg)」が10月8日に報じた。

同行は年内にも協議文書を公表する予定だという。現行案では個人に2万ポンド(約380万円)、企業に1,000万ポンド(約19億円)の保有上限を設定する計画となっている。しかし業務上多額のステーブルコインを保有する必要がある暗号資産(仮想通貨)取引所などについては、この上限を免除する方向で調整しているとのことだ。

こうした上限案は当初から業界団体や企業の強い反発を招いていた。英国暗号資産業界団体(Cryptoasset Business Council)は9月に上限設定の撤回を正式に要請し「ステーブルコイン保有を制限する根拠はなく、国際競争力を損なう」と主張。同団体は米国の「ジーニアス法(Genius Act)」を引き合いに、英国の制度設計の遅れを批判していた。こうした業界の反発や米国との制度競争を背景に、イングランド銀行は規制の一部緩和を検討している。

またイングランド銀行が運営する「デジタル証券サンドボックス」では、ステーブルコインを決済資産として利用できるようにする方針も検討している。これは同行のアンドリュー・ベイリー(Andrew Bailey)総裁による慎重姿勢が軟化した兆候とみられている。さらに同行は大規模なステーブルコインが一部の裏付け資産を短期国債などの高品質な金融商品で保有することを容認する方向でも検討を進めているという。

ブルームバーグによれば、ベイリー総裁は最近ステーブルコインについて「金融イノベーションを促進し、既存の金融システムと共存し得る」との見解を示しているとのこと。そのためステーブルコインとトークナイズド預金の双方を活用する現実的なアプローチへと移行しつつあると伝えられている。

現在、世界のステーブルコイン発行残高は約3,030億ドル(約46兆円)に上るが、そのうち英ポンド建てはわずか58万ドル(約8,000万円)にとどまっており、ユーロ建てステーブルコイン(約4億6,800万ドル)にも後れを取っている。業界関係者は、「英国が1年でも対応を遅らせれば、流動性・人材・投資はニューヨークへ流れる」と警鐘を鳴らしている。

なお7月にはイングランド銀行がリテール向けの中央銀行デジタル通貨(CBDC)「デジタルポンド」導入計画を見送る可能性を検討していると報じられた。同行はCBDCが金融システムや銀行に十分な利益をもたらさない可能性を懸念しており、民間企業による電子決済やステーブルコインの技術革新を重視する姿勢を強めているという。

参考:ブルームバーグ
画像:PIXTA

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