米SECが「ディーラー」再定義する規則を採択。DeFiや暗号資産への影響懸念の声も

SECが新規則を採択

米証券取引委員会(SEC)が、より広範な市場参加者に対し、SECへの登録や自主規制機関(SRO)のメンバーへの加入、規制準拠を求める規則を採用したと2月6日発表した。新規則では、暗号資産(仮想通貨)と分散型金融(DeFi)がより厳格な監督下に置かれる可能性がある。

なお同新規則は2022年3月に提案されたもの。証券法規則における「ディーラー」と「政府証券ディーラー」の定義が再定義された他、1934年証券取引法で使用される「通常業務の一部として」のフレーズも再定義されている。

新規則では「いわゆるDeFi市場に関わる商品、構造、活動を含む暗号資産証券の取引活動が、最終規則に定める[通常業務の一環として]の定義を満たし(すなわち、定性基準に記載されているように、他の市場参加者に流動性を提供する暗号資産証券の定期的な売買パターンに従事し)、例外または除外が適用されない場合、その人はディーラーまたは政府証券ディーラーとして登録する必要がある」と記されている。

新規則で新たに定義されるディーラーの枠組みは、「取引される証券の種類ではなく、個人によって行われる証券取引活動に基づく機能分析」だとSECは伝えている。

これはつまり、証券または政府証券の定義を満たす暗号資産の取引を行う人々に適用される可能性があると読み取れる。

SECのゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は、「これらの措置は常識的なものだ。議会は、登録や規制要件が一部のディーラーに適用され、他のディーラーには適用されないことを意図していない。免除や例外がない限り、事実上のマーケット・メイキングと整合的な方法で取引を行う場合は、ディーラーとして登録しなければならない」とコメントしている。

なお新規則の適用には下限が設けられており、ディーラーは5000万ドル(約73億円)を保有もしくは管理しておくことが義務付けられる。

新しい規則は連邦官報に掲載されてから60日後に発効される予定だ。

業界では様々な声上がる

暗号資産業界関係者は同規則が提案された時から、SECへのコメントレターを通じて反発していた。

ブロックチェーンメディアのザ・ブロック(The Block)によれば、「DeFiエデュケーションファンド(DeFi Education Fund)」は同規則について、DeFiのエコシステムにおいて遵守できないような義務を課すことは間違っていると指摘している。実行不可能であり、イノベーションに逆行していると意見した。

またSECの委員で共和党のマーク・ウエダ(Mark Uyeda)氏も2月6日、同規則に反対している。

「今回の委員会のアプローチでは、通常の業務の一環として証券を売買するのであれば、どんな人でも 『ディーラー』になり得る」と述べ、この変更は「暗号資産証券を含む他の市場にさらなる規制上の混乱をもたらす」と主張している。

また「Crypto Mom(クリプトマム)」として知られる共和党のへスター・パース(Hester Peirce)氏も声明を発表。「最終規則を支持することはできない」とし、「提案の根本的な欠陥がそのまま引き継がれているこの規則は、ディーラーの定義を、その法的枠組みと矛盾する形で定めており、市場行動を歪め、市場の質を低下させるもの」だと指摘した。また、同規則は「顧客であるトレーダーの多くをディーラーに変えてしまう」との懸念も示している。

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参考:新規則SECマーク・ウエダ氏へスター・パース氏
images:iStock/krblokhin

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
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