バイデン政権、新たな「暗号資産税務報告規則」を発表=ロイター

デジタル資産のブローカーにも適用

米財務省が8月25日に発表した規則案では、取引所や決済代行業者を含む暗号資産(仮想通貨)ブローカー(仲介業者)は、利用者のデジタル資産の売却や交換に関する新たな情報を内国歳入庁(IRS)に報告しなければいけなくなりそうだ。

この規則は、納税を怠っている可能性のある暗号資産利用者を取り締まろうとする、議会と規制当局による広範な働きかけの一環である。

財務省によると、フォーム1099-DA(Form 1099-DA)と呼ばれる新しい納税申告書案は、納税者が税金を支払う必要があるかを判断するためのものであり、暗号資産利用者が利益を把握するために複雑な計算をする必要がなくなるよう支援するものだという。

また財務省によれば、デジタル資産のブローカーにも、債券や株式など他の金融商品のブローカーと同様の情報報告ルールが適用されることになるとのことだ。

同法案では、「ブローカー」の定義には、中央集権型と分散型のデジタル資産取引プラットフォーム、暗号資産決済処理業者、ユーザーがデジタル資産を保管する特定のオンラインウォレットが含まれる。このルールは、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、NFTも対象となる。

ブローカーはIRSとデジタル資産保有者の双方にフォームを送付し、納税準備を支援しなければならない。

この新しい要件は、1兆ドル(約146兆円)規模の2021年インフラ投資・雇用法に由来するもので、デジタル資産ブローカーに対する財務報告要件を強化することを目的とした条項が含まれている。

同法はIRSに対し、どのような企業が暗号資産ブローカーとして適格かを定義し、報告するための書式や支持を提供するよう指示した。

また、1万ドル(約146万円)を超える特定の現金取引の報告要件をデジタル資産にも適用。

同法案が可決された時点では、この新規則により10年間で280億ドル(約4兆円)近くがもたらされると見積もられている。

財務省は、この規則を2026年の確定申告シーズンに向けて2025年からブローカーに適用することを提案した。

財務省は声明の中で、「これは、税格差を是正し、デジタル資産がもたらす脱税リスクに対処し、誰もが同じルールに従って行動できるようにするための財務省の広範な取り組みの一環である」と述べている。

暗号資産業界はこの提案に対し、様々な反応を示した。ブロックチェーン協会のCEOであるクリスティン・スミス(Kristin Smith)氏は声明の中で、新規則が正しく行われれば、「日常的な暗号資産利用者が税法を正確に遵守するために必要な情報を得るのに役立つだろう」と述べた。

分散型金融(DeFi)に焦点を当てたロビー団体のDeFi・エデュケーション・ファンド(DeFi Education Fund)のCEOであるミラー・ホワイトハウス=レヴィーン(Miller Whitehouse-Levine)氏は、提案されたアプローチは、確定申告を容易にするものでもなければ、税務コンプライアンスを改善するものでもないと指摘。

また同氏は、「IRSの今日の提案は、混乱を招き、自己矛盾を招きかねず、見当違いである。ブローカーの存在を前提とした規制の枠組みを、ブローカーの存在しないところに適用しようとしている」と述べた。

IRSは現在、暗号資産の取引を含む多くのデジタル資産活動を、その取引が利益をもたらしたかどうかにかかわらず、確定申告で報告するよう暗号資産利用者に求めている。

暗号資産利用者は自分でその計算をする必要があり、デジタル資産が取引されるプラットフォームではIRSにその情報は提供されない。

エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員を含む民主党の上院議員数名は、今月初めに財務省に送った書簡の中で、この規則を速やかに実施するよう求めている。

財務省とIRSは10月30日まで、この提案に対する意見を受け付けている。また、11月7日から8日にかけて、この提案に関する公聴会を開催する予定だ。

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Biden administration unveils new crypto tax reporting rules By Hannah Lang
Reporting by Hannah Lang in Washington, editing by Deepa Babington and Michelle Price
翻訳:髙橋知里
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
images:Reuters

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髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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