ダミアンハースト、NFTを選んだコレクターの現物アート作品を焼却へ

ダミアン・ハーストが自身の作品を燃やす

イギリスの現代アーティストであるダミアン・ハーストが、10月11日に自身のアートワーク数百点の焼却を開始した。一部のコレクターがデジタル画像を表すNFTを、現物作品の代わりに保管することを選んだためだ。

1990年代のヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBAs)シーンで名声を得た同氏は、2021年7月に初のNFTコレクション「The Currency」(カラフルなスポットを描いた1万点のオリジナル作品に対応する1万点のNFT)を発表した。

このコレクションのコレクターは、この2,000ドル約29.7万円)で販売されたNFTを保持するか、現物のアートワークと交換するかを選択しなければならなかった。

ロンドンのニューポートストリートギャラリーによると、約5,149人が後者(現物のアートワーク)を選び、4,851人がNFTを選んだという。

また同社によると、交換されなかったNFTのアートワークは破棄され、逆にアートワークへと交換した場合はNFTが処分されるとのこと。

ハースト氏は10月10日、自身のインスタグラムにて翌日の11日に1,000点の作品を燃やすと告知した。

このイベントはライブストリーミングされた。見物人が見守る中で、ターナー賞受賞者であるハーストとそのアシスタントがトングを使い、山積みにされた個々の作品をギャラリーの暖炉にくべた。

ハースト氏は10日に自身のインスタグラムで「多くの人は、私が何百万ドルもの美術品を燃やしていると思っているようだが、そうではなく、物理的な作品を燃やすことによって、これらの物理的な作品のNFTへの変換を完了している」。「デジタルであれフィジカルであれ、最高のタイミングで定義するのが難しいアートの価値は失われることはなく、焼却されると同時にNFTに移される」と述べている。

これらの作品は2016年にハンドメイドペーパーにエナメルペイントで制作され、それぞれに番号、タイトル、スタンプ、サインが入っている。なお「The Currency」展が閉幕する10月30日まで焼却される予定

NFTは昨年、暗号資産家の投機家たちが価格上昇に乗じて現金化しようとしたため人気が急上昇したが、最近は販売量が減少している。

57歳のハースト氏は、ホルムアルデヒドに浮かぶサメの死体からなる「生者の心における死の物理的不可能性:The Physical Impossibility of Death in the Mind of Someone Living」や、二股に分かれた牛と子牛からなる「母と子の分割:Mother and Child, Divided」など、分裂的な作品で知られている。

またスポット・ペインティングや、18世紀の人間の頭蓋骨にダイヤモンドをちりばめたプラチナ・キャスト「神の愛のために:For The Love Of God」なども有名だ。

同氏は作品を燃やした感想を聞かれ、「いい気分だ、思っていたよりいい」とコメントしている。

NFTとは

「NFT(Non Fungible Token:ノンファンジブル・トークン)」とは、代替が不可能なブロックチェーン上で発行されたトークンを指す。NFTの規格で発行されたトークンは、そのトークン1つ1つで個別の価値を持つ。そのためNFTを画像や映像などのデジタルデータと紐付けることで、デジタルデータの個別の価値を表現することに活用されている。

なおNFTという言葉は現在幅広く活用されており、活用するブロックチェーンやマーケットプレイスの種類によって、その機能や表現できる価値が異なる可能性があることには留意が必要だ。

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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Damien Hirst burns artworks after collectors pick their NFTs instead Reporting by Marie-Louise Gumuchian, additional reporting by Will Russell; Editing by Emelia Sithole-Matarise
翻訳:髙橋知里(あたらしい経済)
images:Reuters

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髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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