BISやイスラエル・ノルウェー・スウェーデンの中銀、CBDC調査プロジェクト開始

BISやイスラエルなどの中銀がCBDCのクロスボーダー決済に向けたプロジェクト開始

国際決済銀行(BIS)とイスラエル、ノルウェー、スウェーデンの中央銀行が共同で、リテール型CBDC(中央銀行デジタル通貨)のクロスボーダー決済に焦点を当てた調査事業「プロジェクト・アイスブレーカー(Project Icebreaker)」を立ち上げたことを9月28日に発表した。

このプロジェクトでは従来の国際決済における手数料の高さや処理時間の長さなどの課題の解決を目標として、CBDCのクロスボーダー決済の実現に向けた調査を行うという。具体的にはCBDCシステムの概念実証を行うためのハブ(アイスブレイカー・ハブ)を設置し、異なる国のCBDCを相互接続するための主要機能と技術的実現可能性を検証するとのこと。

今回検証されるCBDCシステムが実現すれば、従来の国際決済よりも大幅に低い手数料でリテールCBDCの即時送金が行えるようになると見込まれている。

同プロジェクトについてBISイノベーションハブ北欧センター長のビジュー・シャー(Beju Shah)氏は「技術、アーキテクチャ、デザインの選択とトレードオフをより深く掘り下げ、関連する政策上の疑問を探ります」と述べている。

またスウェーデンの中央銀行であるリクスバンク(Sveriges Riksbank)のCBDC部門ミスラ・サンドバーグ氏は「リクスバンクは、eクローナプロジェクト(スウェーデンのCBDCプロジェクト)の一環として、この実験に協力しています。テスト環境で開発された現在のeクローナプラットフォームを他の国と連携させることで、CBDCを用いた国境を越えた決済に関する貴重な教訓を得ることができます」と述べている。

イスラエル銀行副総裁のアンドリュー・アビル(Andrew Abir)氏は「イスラエルのような小さく開かれた経済にとって、効率的で利用しやすい国境を越えた決済は極めて重要であり、このプロジェクトはデジタルシケルの発行を検討する主なモチベーションの1つとして認識されています」と述べている。

ノルウェー中央銀行金融安定性部門責任者のトーブホン・ヘグランド(Torbjørn Hægeland)氏は「このプロジェクトは私たちの国内リテールCBDC決済の実証実験に大きな付加価値を与えるでしょう」と述べている。

このプロジェクトは2022年の年末まで実施され、2023年の第1四半期に報告書が提出される予定となっている。

BISはこれまでにもCBDCのクロスボーダー決済について調査を行ってきた。2021年7月にはIMF、世界銀行と共にCBDCの相互運用性を検証する調査の報告書を公開している。また、2021年12月にはフランスおよびスイスの中央銀行とともにホールセール型CBDCの実験プロジェクト「プロジェクト・ジュラ」に参加し、国際決済におけるCBDCの有効性を検証している。さらに現在も香港にて、香港金融管理局(HKMA)およびタイ、中国、アラブ首長国連邦の中央銀行と共同でCBDCプロジェクト「mBridge」を進めている。

関連ニュース

BIS、IMF、世界銀行がCBDCに関する共同報告書公開

香港金融管理局、リテール型CBDCのロードマップ発表

国際決済銀行とオーストラリア、マレーシア、シンガポール、南アフリカの中銀が、CBDCの国際決済テストへ

国際決済銀行、クロスボーダー決済を実現する「プロジェクト・ネクサス」構想発表

フランス中銀、ホールセールCBDCの実験を複数開始へ

参考:BIS
デザイン:一本寿和
images:iStocks/peshkov・Ninja-Studio

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

小俣淳平

「あたらしい経済」編集部
一橋大学2年生
真面目で温厚な20歳。大学1年生のころにブロックチェーンに出会い、その革新性に衝撃を受け、ブロックチェーン業界に足を踏み入れた。勢いのままに学内で「OneLab」というサークルを立ち上げ、週一で活動している。

「あたらしい経済」編集部
一橋大学2年生
真面目で温厚な20歳。大学1年生のころにブロックチェーンに出会い、その革新性に衝撃を受け、ブロックチェーン業界に足を踏み入れた。勢いのままに学内で「OneLab」というサークルを立ち上げ、週一で活動している。

合わせて読みたい記事

【10/4話題】SWIFTがデジタル資産・通貨を来年試行、グレースケールがAAVEの投資信託など(音声ニュース)

国際決済網SWIFT、デジタル資産・通貨を実際に取引へ、来年試行、Grayscale、アーベ(AAVE)の投資信託を提供開始、フランクリン・テンプルトン、「オンチェーン米国政府マネーファンド」をアプトスに展開、スペイン大手銀行BBVA、Visa支援で「ステーブルコイン」来年ローンチ計画か=報道、リップル、ラテンアメリカ最大の暗号資産取引所メルカドビットコインと提携、国際送金ソリューション利用へ、IMF、「エルサルバドルとのプログラム協議でビットコインは依然として重要な要素」と発言、台湾FSCが新たなマネロン防止規制を起草、プロ投資家限定で海外の暗号資産ETF投資許可も、クリスティーズ、アート作品130点以上にデジタル所有証明書発行、Base採用で、アニモカとランボルギーニ、デジタルカーを売買・所有できるプラットフォーム「Fast ForWorld」立上げ、「NewLo」のプレイシンクがコミュニティラウンドの資金調達へ、株式投資型クラウドファンディングの「イークラウド」で

マスターカードとアマゾンペイメントサービスが提携、中東・北アフリカでデジタル決済拡大へ

米決済大手マスターカード(Mastercard)が、中東・北アフリカ(MENA)地域におけるデジタル決済の普及に向け、同地域のオンライン決済ソリューションプロバイダー「アマゾンペイメントサービス(Amazon Payment Services)」と複数年にわたるパートナーシップを締結したことを9月30日発表した

エドワード・スノーデンが「ビットコインは最悪のシナリオを想定して設計されたシステム」と評価、ソラナの運用モデル指摘も

米中央情報局(CIA)の元職員エドワード・スノーデン(Edward Snowden)氏が、「国家の介入に抵抗できるようにプロトコルレベルからサービスを設計しなければ、テレグラムのような事態に直面することになる」との考えを示した