香港金融管理局、リテール型CBDCのロードマップ発表

香港金融管理局、リテール型CBDCのロードマップ発表

香港の実質的な中央銀行である香港金融管理局(HKMA)が、リテール型中央銀行デジタル通貨(CBDC)発行へ向けたロードマップを9月20日に発表した。

HKMAは「e-HKD」と呼ばれるリテール型CBDCの発行を検討しており、2021年10月に「e-HKD」の技術面に関する論文を、2022年4月に政策面に関する論文を発表していた。そして今回、HKMAはこれらの論文に寄せられたコメントを参考に「e-HKD」導入に向けたプロセスを策定した。 HKMAによると、3つのステップを通じて「e-HKD」の導入を行うとのことだ。

まず最初のステップでは技術的な面と法的な面の基礎固めを行う。技術的な面では、リテール層を支えるホールセール層の技術基盤を整えるとのこと。このホールセール層の構築には、計画を策定するまでに9か月、開発に2~3年を要する見込みだという。法的な面ではデジタル形式での法定通貨の発行を可能にするための法改正を進めるとのことだ。

2番目のステップではパイロットテストを通じて「e-HKD」のユースケースを検討するとのこと。具体的にはウォレットアプリによるe-HKDへのアクセスや「e-HKD」のDeFiへの適用などが挙げられている。

そして最後のステップが「e-HKD」の展開である。これまでのステップで培った知見を統合し、「e-HKD」を市場に導入するとのこと。このステップは市場動向やステップ1・2の進行状況に左右されるため、具体的な日程は示されていない。

HKMAの責任者エディ・ユエ氏は、以下のようにコメントしている。 「2回にわたる市場調査で、e-HKD構想に対する幅広い支持を得ることができました。私たちは香港の中央銀行として、CBDCに関してできる限りの準備を整え、革新的なアイデアを育てるための適切な土壌を提供することで、香港が世界の金融情勢において主導的な役割を果たし続けることを保証します」

香港の動向

HKMAは2017年からCBDCの研究に取り組んでいる。当初はホールセール型CBDCに着目し、大口決済にCBDCを適用するためのプロジェクトを進めていた。

その後2019年にタイ銀行と共同で「プロジェクト・インタノン・ライオンロック(Project Inthanon-LionRock)」を開始し、クロスボーダー決済の研究に取り組み始めた。このプロジェクトは現在「mBridge」と改称し、アラブ首長国連邦中央銀行や中国人民銀行なども参加する多国籍プロジェクトとなっている。

そして2021年にHKMAは「フィンテック2025」戦略をきっかけに、リテール型CBDCを研究する「プロジェクトe-HKD」を開始している。

関連ニュース

香港金融管理局、中銀デジタル通貨の方針を発表 

中国、UAE、香港、タイが共同でクロスボーダー決済プロジェクトを開始

香港証券先物委員会、NFTの投資リスクを警告

ソフトバンクら、web3やSaaSへ投資するファンド「GE III」へ出資

米シティ、BC活用の貿易金融PF「TradeLens」の試験運用完了

参考:香港金融管理局 
images:iStocks/ValeryBrozhinsky
デザイン:一本寿和

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

小俣淳平

「あたらしい経済」編集部
一橋大学2年生
真面目で温厚な20歳。大学1年生のころにブロックチェーンに出会い、その革新性に衝撃を受け、ブロックチェーン業界に足を踏み入れた。勢いのままに学内で「OneLab」というサークルを立ち上げ、週一で活動している。

「あたらしい経済」編集部
一橋大学2年生
真面目で温厚な20歳。大学1年生のころにブロックチェーンに出会い、その革新性に衝撃を受け、ブロックチェーン業界に足を踏み入れた。勢いのままに学内で「OneLab」というサークルを立ち上げ、週一で活動している。

合わせて読みたい記事

【3/29話題】FTX創業者に懲役25年、イーサリアムのBlobが碑文に使用でネットワーク混雑など

FTX創業者に懲役25年、詐欺などで=NY地裁、イーサリアムの「Blob」、「インスクリプション(碑文)」に使用されネットワーク混雑、米・英当局、制裁対象の露Garantex経由送金の200億ドルのUSDTを調査中=報道、BitwiseとFidelity、SECへ「現物イーサリアムETF」申請、トークン化ダイヤモンドへの投資が可能に、Oasis ProとAvalanche活用でDiamond Standardがファンド通じて、NFTとweb3ゲーム特化チェーン「WAX」がAWSと提携、「WAX AWS CDK」提供開始、アービトラムが、Azukiと共同で次世代アニメネットワーク「AnimeChain」立ち上げ、ヴィタリック、「リキッドステーキング」の中央集権化リスクに言及、マークアンドリーセンとGalaxy Digital、1kxのクリプトファンドに出資=報道、ビットコイン現物ETFに資金流入増、価格回復受け、ハッシュポート、FosunとRWA分野のジョイントベンチャー設立

マークアンドリーセンとGalaxy Digital、1kxのクリプトファンドに出資=報道

大手ベンチャーキャピタル(VC)アンドリーセンホロウィッツ(a16z)の共同創業者マーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)氏が、暗号資産(仮想通貨)運用企業ギャラクシーデジタル(Galaxy Digital)らと共に、暗号資産(仮想通貨)系VCの1kx(ワンケーエックス)による最新のファンドに投資家として参加したようだ

ハッシュポート、FosunとRWA分野のジョイントベンチャー設立

HashPort(ハッシュポート)が、香港証券取引所に上場するFosun International Limited:Fosun(フォースンインターナショナルリミテッド)の子会社であるFosun Entertainment Japan:FEJ(フォースンエンターテイメントジャパン)と共同で、ジョイントベンチャー「Fosun Real World Asset:Fosun RWA(フォースンリアルワールドアセット)」を設立した