なぜNFTは私たちにサッカーの未来を垣間見せるのか? Bored Apesとブロックチェーン

なぜNFTは私たちにサッカーの未来を垣間見せるのか?

サッカーのスター選手たちに新しいプレイが加わった。ブラジルのネイマールからリバプールのアンドリュー・ロバートソンまで、多くの選手がNFTに参加している。NFTなどのデジタル資産は、スポーツの変化し続ける未来を垣間見せてくれるだろう。

ネイマールやイングランド代表のDFリース・ジェームスが、最近ソーシャルメディアのプロフィール写真をApe(サル)のファンキーなデジタルアート作品に変更したのをご存知だろうか。これは人気NFT「Bored Ape Yacht Club」のコレクションの一部だ。

NFTは「non-fungible tokens(非代替性トークン)」の略語で、画像やビデオ、サウンドクリップにリンクされたデジタル資産だ。NFTを支える技術であるブロックチェーンでは、オリジナルの所有権は保証されている。しかし多くの人々は、物理的に存在しないオンラインで自由に閲覧できるアイテムに、何故これほど多くの費用がかかるのか不可解に思っている。

「サッカー選手はこうしたものの格好のターゲットだ」とイングランド・プレミアリーグの選手を担当する、ある代理人はロイターに語った。「彼らは何かを所有しているという話題を持って練習に参加するのは、ステータスなのです。身につけることのない腕時計のようにね」

NFTの所有者の中には、価格上昇の恩恵を受けたいと望んでおり、その想いが自らのNFTを宣伝する動機にもなっている。

サッカーに特化したNFTエージェンシーであるイギリスのキャピタル・ブロック(Capital Block)のCEO、ティム・マンナル氏はロイターに対し「これらのApeは昨年は180ドル(約2万円)で売られていた」と語った。

「今では、ほとんどが75万ドル(約8,700万円)から200万ドルの間で売られている。それはとても高級なクラブだ」「私はBored Ape Yacht Clubのファンだが、NFTとアートの周辺は間違いなくバブルだと思う」

反応は控えめに言っても様々で、ロバートソンとリバプールのDFトレント・アレクサンダー=アーノルドは、彼らが「コレクション」発売した際に受けた怒りの声のあまり、ツイッターのリプライをオフにせざるを得なくなったほどだ。

NFTは暗号通貨との関連や、この新たな流行にまつわる謎が主な懸念材料となっている。

サッカー支援者協会のマルコム・クラーク会長はロイターに対し、「NFTに関与しなくても、ファンとの関わり合う他のモデルはたくさんある」と語った。

サッカー関係者が投機的な投資スキームに手を出すのは今回が初めての事ではないが、今回に至ってはクラブも現金化を望んでいる。

ドイツのブンデスリーガは、デジタル企業Sorare(ソーレア)とNFTパートナーシップを結んでいる。一方で米国の全米バスケットボール協会(NBA)のTop Shot(トップショット)プラットフォームを開発するのはブロックチェーン企業Dapper Labs(ダッパーラボ)だ。ダッパーラボは、スペインのラ・リーガ部門と契約を結ぶほど人気がある。なお現在ソーレアは、英国ギャンブル委員会によって調査されている。

何を伝えたいのかというと、バスケットボールファンがレブロン・ジェームズのスラムダンクのビデオのNFTに20万ドル(約2,300万円)以上を支払ったように、ボルシア・ドルトムントのストライカー、エルリング・ハーラントの珍しいデジタルトレーディングカードはひと月に70万ドル(約8,100万円)近くで売れたのだ。

なおプレミアリーグはそのパイの分け前を欲しがっている。

「プレミアリーグのすべてのクラブがNFTについて話し合っていることは知っている」とキャピタルブロックのマンナル氏は付け加えた。また「ファンエンゲージメントは大きな魅力だ。クラブができることは、まだ表面化したわけではない」

プレミアリーグはコメントを控えたが、関係者はロイター通信に対し、プレミアリーグは選択肢を検討中であると語った。英国のメディアは、クラブにとって4億ポンドの価値があると報じている。

先月、チェルシーの元キャプテン、ジョン・テリー氏は商標権に関連するリーグによる法的介入を受け、自身の「Bored Ape」にのせていたプレミアリーグのトロフィーを取り外した。

世界中の多くのトップチームが独自のファントークンを立ち上げており、サポーターは試合前の歌を決めるような些細なことにお金を払うことで発言権を得ることができるのだ。これもまた万人受けするものではないのではないか。

しかしお金がかかっている以上、このようなものが増えるのは必然であるかもしれない。

「私はアーセナルのファンだ」とマンナル氏は付け加えた。「アーセナルの試合を見て、(監督の)ミケル・アルテタのインタビューを見るんだ。それから、他の人が話している番組も見るよ」

「もし、NFTを作ったら、そのNFTを所有している1000人の選ばれたグループだけが見られる、アーセナルの監督の個人的な洞察を得ることのできる特別なクラブに入ることができるとしたら、どうだろう?」

可能性は無限大だ。

NFTとは

「NFT(Non Fungible Token:ノンファンジブル・トークン)」とは、代替が不可能なブロックチェーン上で発行されたトークンを指す。NFTの規格で発行されたトークンは、そのトークン1つ1つで個別の価値を持つ。そのためNFTを画像や映像などのデジタルデータと紐付けることで、デジタルデータの個別の価値を表現することに活用されている。

なおNFTという言葉は現在幅広く活用されており、活用するブロックチェーンやマーケットプレイスの種類によって、その機能や表現できる価値が異なる可能性があることには留意が必要だ。

関連ニュース

人気NFT「BoredApeYachtClub(BAYC)」から音楽レーベル誕生

マイアミの人気ナイトクラブ、BAYCを約4,500万円で購入

競争激化する「スポーツ×NFT」、ダッパーラボが約270億円調達と、スペインサッカーリーグと提携を発表

ソフトバンク、NFTサッカーゲーム「Sorare」の約745億円調達を主導

サッカーUEFAがファントークン発行へ、チリーズ「Socios .com」と提携

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。

Bored Apes and blockchains – why NFTs give us a glimpse into soccer’s future

Reporting by Peter Hall; additional reporting by Elizabeth Howcroft; Editing by Toby Chopra

翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
images:iStocks/Khosrork・Eugene_Onischenko

この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

合わせて読みたい記事

「OASIS」がメタバース×NFTで創る、もう一つの私たちの居場所。コミュニティの取り組みや「OASIS COMMUNITY PASS NFT」を徹底取材

「OASIS」を担当するコインチェックの天羽健介氏、塚田竜也氏、そして「OASIS」コミュニティの運営に携わる中西大輝氏を取材。そもそも「OASIS」とはどんなプロジェクトか、そして現在のコミュニティ内での取り組み、NFT「OASIS COMMUNITY PASS NFT」についての詳細などについて訊いた。

【限定半額クーポン有】京都開催web3イベント「IVS Crypto 2023 KYOTO」がコンテンツ発表、あたらしい経済もメディアパートナーに

暗号資産(仮想通貨)/ブロックチェーンなどweb3領域に特化した大規模カンファレンス「IVS Crypto 2023 KYOTO」が、6月28日(水)~6月30日(金)の3日間、京都市勧業館「みやこめっせ」「ロームシアター京都」で開催される。

【取材】Symbolでジェネラティブ/フルオンチェーンNFT制作ツール、NFTDrive「隼 HAYABUSA」発表(中島理男)

「あたらしい経済」編集部は、「NFTDrive」サービスを軸に、前述のジェネラティブNFT生成ツール「隼 HAYABUSA」や、P2Pウォレット「NFTDriveEX」など、フルオンチェチェーンNFT関連サービスの開発に注力する株式会社NFTDrive代表の中島理男氏を取材した。

招待制web3イベント「B Dash Crypto」が札幌で5月24-26日開催! ピッチコンテスト応募者やスタートアップ参加者 募集中

ネット業界の第一線の経営者やキーパーソンが集結する日本最大級の招待制カンファレンス「B Dash Camp 2023 SPRING in SAPPRO」が5月24-26日に札幌で開催される。そしてそのイベント内同会場でブロックチェーン・暗号資産などweb3領域に特化したカンファレンス「B Dash Crypto」も同時開催される。

企画書だけで助成金が貰える? UNCHAIN「web3開発助成金プログラム:進捗2Earn」とは(shiftbase 志村侑紀/日原翔)

「UNCHAIN」で新たなプロジェクト「web3開発助成金プログラム:進捗2Earn」がスタートする。あたらしい経済編集部はshiftbase 取締役CCOの志村侑紀氏と取締役CTOの日原翔氏、そしてすでに助成金プログラムにプレ参加している起業家のkimi氏、エンジニアのkeit氏に取材した。

web3の未来は? 暗号資産/ブロックチェーン業界を牽引する80人の「2023年の展望」

「あたらしい経済」年始の特別企画として、ブロックチェーン・暗号資産業界を国内外で牽引するプレイヤーや有識者の方々に「2023年の展望」を寄稿いただきました。80人の方々の合計40,000字を超えるメッセージには、これからのweb3領域のビジネスのヒントやインサイトに溢れています。じっくりと読んで、これから「あたらしい経済」を切り開くための参考にしていただけますと幸いです。