バイナンス、AI活用で約1.6兆円の詐欺被害を防止

不正検知・詐欺防止を報告

バイナンス(Binance)が2025年初頭から2026年第1四半期にかけて、累計105億3,000万ドル(約1兆6,577億円)にのぼるユーザー被害を防いだと5月11日報告した。対象ユーザー数は540万人以上にのぼる。

同社によれば、2026年第1四半期だけで2,290万件の詐欺・フィッシング試行を検知・阻止し、約19億8,000万ドル(約3,116億円)相当のユーザー資産を保護したという。また、3万6,000件以上の悪意あるアドレスをブラックリストに登録し、1日あたり9,600件超のリアルタイム警告をユーザーへ発信したとのことだ。

バイナンスがこうした大規模な対策に乗り出す背景には、AI技術を悪用した詐欺の急速な高度化があるとのこと。

バイナンスリサーチの分析によると、スマートコントラクト悪用コストは1コントラクトあたり最低1.22ドル(約192円)まで低下しており、コストは前月比22%低下した。さらに高度なAIモデルによる攻撃の成功率は72.2%に達するという。

ディープフェイク、フィッシングボット、音声クローニング、なりすましなど、AIを活用したソーシャルエンジニアリング攻撃も激化しており、AI主導型詐欺の76%が「規模・深刻度ともに最上位」に分類されるという。2025年における暗号資産関連詐欺の被害総額は170億ドル(約2兆6,756億円)に達し、前年比30%増を記録した。

これに対しバイナンスは、2025年末時点で24以上のAI主導型セキュリティ施策と100以上のAIモデルを稼働させており、現在も拡張を続けている。

具体的には、コンピュータービジョンによる偽の支払い証明の検出、P2P取引におけるリアルタイムの言語解析によるサクラ・詐欺パターンの検知などを実施。不正対策の57%でAI主導の意思決定を採用しており、クレジットカード詐欺率は業界平均と比べて60〜70%低い水準を維持しているとしている。

本人確認(KYC)システムでもAIを活用し、高度化するディープフェイクや合成IDへの対応能力を強化。従来の手動プロセスと比較して最大100倍の業務効率化を実現しているという。

AIエージェントの普及を見据えた取り組みとして、バイナンスは「Binance Ai Pro」と呼ぶAIエージェント向け環境で、セキュリティを組み込んだアーキテクチャを導入している。

AIエージェントが管理する資金はメインアカウントから分離され、権限は取引のみに限定。出金アクセスは無効化されている。また、サードパーティの「スキル(機能拡張)」はインストール前にスクリーニングが義務付けられており、これまでに提出されたスキルの約12%が潜在的リスクありとして検出されたという。

テクノロジーと並行して、ユーザー教育にも力を入れており、2026年第1四半期にはアカウント乗っ取り(ATO)に関する教育施策が17万9,000人以上のユーザーへ届けられた。

被害回復の面でも成果が出ており、2025年には4万8,000件のケースで1,280万ドル(約20億円)の資産回復を支援。前年比41%増となった。また、世界の法執行機関と連携し、1億3,100万ドル(約206億円)相当の不正資金の押収に協力したほか、7万1,000件以上の捜査機関からの要請に対応したという。

バイナンスは「AIは攻撃と防御の両方を変えつつある。セキュリティはシステム・プロセス・ユーザー行動に横断的に組み込まれるべきものであり、単なる付加的なレイヤーとして扱うべきではない」とコメントしている。

参考:ブログ
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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