米コインベース、FTXヨーロッパの買収を2度検討か=報道

デリバティブの重要性が理由か

米大手暗号資産(仮想通貨)取引所のコインベース(Coinbase)が、昨年11月に破綻した暗号資産取引所FTXの欧州部門であるFTXヨーロッパ(FTX Europe AG)の買収を進めていたことが明らかとなった。フォーチュンクリプト誌が9月22日報じた。

報道によればコインベースは、FTXが昨年11月に米国でチャプター11(連邦破産法第11条)を申請した直後と、今年9月上旬の2度にわたり、FTXヨーロッパの買収を検討したという。

フォーチュンクリプト誌によればこの動きは、弱気相場でスポット取引量が急減する中、コインベースが世界的にビジネスを拡大する計画においてデリバティブの重要性が高まっている証拠だという。しかしその一方で、買収交渉が最終段階まで至らなかったことにも触れ、もはやコインベースは、この買収を進めていないと伝えている。

なおコインベースの他にFTXヨーロッパの買収に興味を持つ企業としては、大手暗号資産取引所のクリプトドットコム(Crypto.com)や暗号資産企業のトレックラボ(Trek Labs)などが報じられている。またFTXの売却期限は9月24日までに延長されたという。

なおFTXヨーロッパの前身であるスイス企業Digital Assets AG(DAAG)の買収に、FTXは3億7,600万ドル(約558億円)もの資産を費やしていたことが、7月に提出された裁判資料にて明らかとなっている。

FTXヨーロッパは、キプロスの規制ライセンスの下でデリバティブ事業を運営していた取引所。FTXが破綻するまでに、永久先物取引(パーペチュアル取引)など人気のあるデリバティブ商品を提供していた唯一の会社であった。

なお「パーペチュアル取引」とは、現物と先物、CFD(差金決済取引)の特徴を併せ持つデリバティブ取引だ。従来の先物取引では契約時に決済満期日と、その日にいくらで売買するのかを決定するが、パーペチュアルには限月が無く、無期限に建玉を保持することが可能だ。

またコインベースはデリバティブ市場進出にも意欲的な姿勢だ。

コインベースは5月、「米国以外の的確な管轄区域に拠点を置く機関投資家」へサービス提供を行うオフショアデリバティブ取引所「コインベースインターナショナルエクスチェンジ(Coinbase International Exchange)」の立ち上げを発表している。

また8月には、米国で暗号資産のデリバティブ商品を取り扱うための「先物取引業者(FCM)」の承認を得たことを発表している。

なおコインベースは昨年1月に米デリバティブ取引所フェアエックス(FairX)を買収し、同取引所をコインベースデリバティブエクスチェンジ(Coinbase Derivatives Exchange)と改称して先物商品の提供を行っていた。

8月の「FCM」取得により、コインベースは直接先物商品を提供できるようなっている。

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参考:フォーチュンクリプト誌
デザイン:一本寿和
images:iStocks/metamorworks・Ninja Studio

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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