【緊急取材】日本から「世界に繋がる」パブリック・ブロックチェーンを。バイナンスをリード投資家に約2.5億円の資金調達したステイクテクノロジーズ渡辺創太氏インタビュー

日本発のパブリックブロックチェーンであるプラズムネットワーク(Plasm Network)の開発企業ステイクテクノロジーズ(Stake Technoloiges Pte Ltd)がバイナンス(Binance)をリード投資家に約2.5億円の資金調達を実施したことを発表した。

今回の調達にはバイナンスラボ(Binance Labs)をはじめ、ハッシュキー(HashKey)、パカベンチャーズ(PAKA Ventures)、ロングハッシュベンチャーズ(LongHash Ventures)、デジタル・ファイナンス・グループ(Digital Finance Group)ら世界各国の企業が名を連ねる(→ニュース詳細はこちら)

世界的な暗号資産(仮想通貨)取引所をリード投資家に迎えた資金調達は日本初の快挙だ。今回の発表をしたStake Technologies株式会社及びそのシンガポール法人Stake Technoloiges Pte Ltdの代表を勤める渡辺創太氏に取材した。

ステイクテクノロジーズのプラズムネットワークとは?

Stake Technologies株式会社/Stake Technoloiges Pte Ltd CEO 渡辺創太氏

−まずステイクテクノロジーズが取り組んでいるプラズムネットワークについて教えてください。

イーサリアムの元CTOギャビン・ウッドが進めているポルカドット(Polkadot)というプロジェクトがあります。ポルカドットは現在ベータ版にも関わらず、仮想通貨の時価総額としてはトップ5に入るプロジェクトなのでご存知の人も多いかもしれません。

ポルカドットは異なるブロックチェーン同士にインターオペラビリティ(相互運用性)をもたらすプロジェクトです。そして私たちの開発しているプラズムネットワークは、そのポルカドットに接続するパブリック・ブロックチェーンです。

今はインターネットが世界中で繋がっています。しかしインターネットが生まれたばかりの頃は例えば日本でも、二つの大学の研究室を繋ぐといったように、そのネットワークは限定的でした。

まさに今のブロックチェーンは、その頃のインターネットのような状況だと思ってます。ただこれからたくさんのブロックチェーンが産まれて大きくなっていくと、インターネットのように相互連携していく必要が出てくると思います。

それを解決するのがポルカドットであり、そこに繋がる私たちのプラズマネットワークです。私たちは多くのプロジェクトと相互連携できるパプリックなブロックチェーンを作っています。

資金調達の裏側

−今回の調達にあたってどのようにバイナンスらにアプローチしていったのでしょうか?

まずは特定の業界に対する影響力や情報などを持っている人々のインナーサークルに入ることが重要です。

今回の資金調達にあたっては、私たちがWeb3.0財団やポルカドットを開発するパリティテクノロジーズ(ParitiyTechnologies)らと仕事を重ねることで彼らのインナーサークルに入り、そこから投資家たちに紹介してもらえたことがまず大きかったと思います。

その上で、私たちはプラズムネットワークのトークンのエコノミクスがどうなっているか、そして何をしていきたいのかを伝えていきました。私たちのプラズムネットワークは世界で初めてポルカドットのテストネットに接続したプロジェクトです。そしてロックドロップ(Lockdrop)という手法を通して当時約65億円相当のイーサリアムをロックしてもらった実績もあります。

それらの実績、そして私たちのプロダクトは100%オープンソースですので、そこも見て評価と信頼を得て、今回の調達に至ったと考えています。

−今回の調達を通じて、投資家はブロックチェーンプロジェクトの何を評価すると感じましたか?

ブロックチェーンプロジェクトに関しては、大前提としてどのフィールドで戦っているのかが非常に大事だと感じました。イーサリアム、ポルカドット、アバランチ(Avaranche)など、どこのパブリックブロックチェーンで戦っているのかという点です。

その点で今世界的にも注目されているポルカドットのフィールドで数年前から戦っていて、先ほど話したような成果や結果を出せていることが評価いただけたと思ってます。

調達資金は世界中のトップエンジニア採用へ 

−今回の調達資金はどのように活用するのでしょうか? 私たちはグローバルで一番を取りにいきたいので、まずは優秀なエンジニアをしっかり集めていきたいと思っています

まだまだグローバルでもポルカドットのことを理解していて、かつ技術がエンジニアは少ない状況です。そこにしっかりとフィーを払って私たちのプラズムネットワークに貢献してくれる人を集め、プロジェクトの開発を加速させていきたいと思っています。

−具体的にどこに開発リソースを集中させているのでしょうか。

まずはイーサリアムとポルカドットの互換性を作るプロジェクトです。イーサリアムのERC20トークンなどをポルカッドでも使えるようにしたい。

ポルカドットと繋がっている私たちのパブリックブロックチェーンであるプラズムネットワークでイーサリアムのERC20などを使えるようにしていきたいのです。

イーサリアムのブラウザウォレットであるメタマスク(Metamask)がプラズムネットワークに接続したり、イーサリアムの開発ツールであるリミックス(Remix)やトラフル(Truffle)を用いた開発はプラズムネットワークで既に可能になっています。次はイーサリアムのアセットをプラズム上に持ってきて使えるようにするブリッジを作りたいです。もちろん、バイナンスチェーンとのブリッジも視野に入っています。

−それが実現すれば具体的にどのようなことができるようになると考えていますか?

たとえば、現状分散型金融(DeFi)プロトコルのユニスワップ(Uniswap)はERC20のトークンの交換しかできません。それはユニスワップがイーサリアムのブロックチェーンを使っているからです。

例えば既にそういうプロジェクトはあるんですが、ポルカドットで分散型取引所(DEX)を作ることができれば、そこではERC20トークンだけではなく、ポルカドットに接続してくるビットコインなど他のブロックチェーンのトークンも使えるようになります。つまりビットコインとERC20トークンが取引できるようになるわけです。

そうなれば既存の中央主権型取引所(CEX)の必要性が問われてくるのではないかと見ます。バイナンスはそんな未来も理解しているので、ポルカドットのファンド立ち上げ、私たちのようなプロジェクトに投資をしているんだと思ってます。

ステイクテクノロジーが目指すあたらしい会社のカタチ

−ステイクテクノロジーは今後どのように企業として拡大していこうと思っていますか?

一般的に多くのスタートアップが目指すイグジットは、IPOかM&Aですよね。一般のビジネスであればそれは当然なのですが、ブロックチェーン、特にパブリックなブロックチェーンプロジェクトを実施している企業がそれを目指してしまうと、単一障害点まっしぐらなところに進んでいってしまいます。それに私は物凄い違和感感じます。プロトコルが誰に対してもオープンであり続け単一の組織が操作をできないというのがパブリックブロックチェーンのコアなバリューです。

例えばパブリックブロックチェーンを作っている会社がIPOで上場した場合、このコアバリューを維持し続けるのは難しいのではないかと考えています。

私たちはプラズムネットワークというパブリックブロックチェーンを作る会社です。最終的には会社を自律分散型組織(DAO)にして、株式会社をファウンデーションに切り替えていくことを目指していきたい。

そうすればリスクが分散でき、パブリックブロックチェーンを生かし続けることができる。その過程で、いま投資してくださっている株主もいるので、しっかりとリターンを返すことにはこだわっていきたいと思っています。

パブリック・ブロックチェーンこそ「ブロックチェーン」だ

−ステイクテクノロジーズはこれまでパブリック・ブロックチェーンにこわだって事業展開を進めてきたと思います。なぜそこまでパブリックにこだわるんでしょうか? 

ブロックチェーンでできること本質的に考えた時に、パブリック・ブロックチェーンこそ未来だと考えているからです。ブロックチェーンが本質的に有用であるのは、複数のお互いの違う会社やエンティティなどが信頼できない者同士で取引を行う時の信頼コストが高い場合です。

経済活動は数えきれないくらいの複数主体で成り立っていますが、その一部を切り出してネットワークを形成するブロックチェーンの使い方は現状ではサイロを増やしていくだけです。

イーサリアム創始者のヴィタリックも2020年の振り返り記事(https://vitalik.ca/general/2020/12/28/endnotes.html )で書いていましたが、パブリックブロックチェーンに代わると主張する中央集権的なアプローチやコンソーシアムベースのアプローチは想像よりも進まず、一方で「非効率的な」パブリック・ブロックチェーンベースのソリューションが技術の進展とともに実際に採用されるようになるはずです。

パブリック・ブロックチェーンはスケーラビリティ、秘匿性、Gas代の観点でまだまだ問題点はあります。しかし、それらが全部解決されたら、僕は基本的にみんなパブリック・ブロックチェーンを使うと信じています。

だから私たちはパブリックブロックチェーンを攻めていきたい。

速いからコンソーシアムを使うという考え方ではなく、どうしたらパブリック・ブロックチェーンを使えるかということを世界のプレーヤーと考えていきたい。そもそも今ブロックチェーンに関わる人は、初めのきっかけとしてはやはり、ビットコインやイーサリアムを代表するパブリック・ブロックチェーンに魅力を感じて関わるようになった人が多数だと思います。

だからパブリック・ブロックチェーンの技術に正面からぶつかって、その問題点をグローバルのトップのエンジニアたちと解決して、ブロックチェーンのそもそもの理想を実現すること、そのムーブメントをより盛り上げることにコミットしていきたいです。

取材/編集:竹田匡宏・設楽悠介
撮影:大津賀新也

この記事の著者・インタビューイ

渡辺創太

Astar Network・Stake Technologies CEO/Founder
1995年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。インド、ロシア、中国、アメリカでインターンシップ活動を経験後、2018年シリコンバレーのブロックチェーン企業Chronicledに就職。帰国後、東京大学大学院ブロックチェーンイノベーション寄付講座共同研究員を経て、Stake Technologiesを創業。同社でパブリック・ブロックチェーン「Astar Network」を立ち上げる。日本ブロックチェーン協会理事や、内閣官房Trusted Web推進協議会のタスクフォースメンバー、株式会社丸井グループのアドバイザーも務める。2022年、雑誌『Forbes』の「Forbes30 Under 30 Asia」に選出される。

Astar Network・Stake Technologies CEO/Founder
1995年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。インド、ロシア、中国、アメリカでインターンシップ活動を経験後、2018年シリコンバレーのブロックチェーン企業Chronicledに就職。帰国後、東京大学大学院ブロックチェーンイノベーション寄付講座共同研究員を経て、Stake Technologiesを創業。同社でパブリック・ブロックチェーン「Astar Network」を立ち上げる。日本ブロックチェーン協会理事や、内閣官房Trusted Web推進協議会のタスクフォースメンバー、株式会社丸井グループのアドバイザーも務める。2022年、雑誌『Forbes』の「Forbes30 Under 30 Asia」に選出される。

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