コインベース・ベンチャーズ、2026年に注目する暗号技術投資テーマを公開

RWAパーペ、次世代DeFi、AI×オンチェーンなどに注目

米暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース(Coinbase)の投資部門であるコインベース・ベンチャーズ(Coinbase Ventures)が、2026年に向けて注目する開発・投資領域をまとめたレポート「コインベース・ベンチャーズ:2026年に期待するアイデア(Coinbase Ventures: Ideas we are excited for in 2026)」を11月25日に公開した。

対象は、「RWA(現実資産)パーペチュアル」、「専門特化型取引所や取引ターミナル」、「次世代DeFi(分散型金融)」、「AIおよびロボティクス」など、暗号資産と既存産業の融合を象徴する分野が中心となっている。

コインベース・ベンチャーズは、今回発表された領域は単なる市場予測ではなく、実際に投資対象として検討している分野であると説明している。また該当領域で開発を進めるプロジェクトに対し、X経由でのコンタクトも呼びかけている。

まず、重点テーマのひとつとして挙げられたのが、「RWAパーペチュアル(現実資産を対象とする無期限先物)」だ。これは、実際に資産をトークン化しなくても、オフチェーン資産への価格エクスポージャーをオンチェーン上で合成的に再現できる仕組みで、トークン化に比べて柔軟性とスピードに優れる手法として紹介されている。

レポートでは、非公開企業や各種経済指標といった従来オンチェーン化が困難だった対象に加え、原油、インフレ指標、クレジットスプレッド、ボラティリティなどのマクロ金融商品も、将来的にはオンチェーンで取引される可能性があるとの見解が示された。

「専門特化型取引所や取引ターミナル」としては、ソラナ(Solana)上に登場しているProp-AMM型取引所が取り上げられた。これは、流動性提供者(LP)が直接一般ユーザーと相対取引を行うのではなく、アグリゲーター経由のみで注文が成立する仕組みを採用することで、LPを略奪的なフローから保護する設計とされている。

コインベースは、従来の汎用ブロックチェーンでは実装が難しかった高度な市場構造を、アプリ特化型の設計によって実現している点を評価しており、今後はソラナの現物市場にとどまらず、他分野への応用可能性にも言及している。

近年成長が続く予測市場については、流動性やUIが分断されている点が課題として挙げられた。現状では、複数のマーケットごとに異なるインターフェースを使い分ける必要があり、プロトレーダー向けの取引環境は十分に整っていないと指摘している。

この課題に対し、コインベースは複数の予測市場を横断的に統合するアグリゲーター型トレーディングターミナルの登場を想定。将来的には、イベント契約に特化した専用端末として、高度な注文機能、チャート分析、複数市場へのルーティング、ポジション管理、複数市場間のアービトラージ分析などを一括で行える環境が主流になるとの見方を示した。

「次世代DeFi」分野では、パーペチュアル取引とレンディングの統合が今後さらに進展するとしている。すでに一部の取引所では、レバレッジポジションを維持しながら担保資産から利回りを得る仕組みが実装されつつあり、発表では資本効率の大幅な向上につながると説明されている。

また、無担保クレジット市場も有望分野として挙げられた。オンチェーンの取引履歴や評判データと、オフチェーンの信用情報を組み合わせた新たな信用モデルによって、従来は難しかった無担保融資が大規模に解放される可能性があるとしている。米国だけでも無担保クレジット市場は約1.3兆ドル規模とされており、暗号資産の本格参入余地があるとの認識が示された。

ブロックチェーンの「完全な透明性」については、機関投資家やプロトレーダー、一般ユーザーにとって、取引履歴がすべて公開される点が普及の障害になり得るとの見解が示された。

これを背景に、匿名性を重視する暗号資産や、取引内容を秘匿化するDeFiアプリ、プライバシーを重視した決済向けブロックチェーンへの関心が高まっていると説明されている。加えて、ZKP、FHE、MPC、TEEsといった暗号技術を用いたプライバシー保護機能のレイヤー化についても言及された。

「AIおよびロボティクス」分野では、ロボット学習用データの不足問題が課題として挙げられた。特に、人型ロボットなどの高度な制御に必要な、把持や圧力、変形する物体を扱う際の物理インタラクションデータが不足しているとしている。この分野に対しては、分散型物理インフラネットワーク(DePIN)型のインセンティブ付きデータ収集モデルが有力な解決策になり得るとの見方を示した。

また、オンチェーン開発のAI化も注目分野とされ、スマートコントラクトのコード生成、セキュリティ監査、リスク管理、継続的な監視までをAIエージェントが担うことで、非エンジニアでも短時間でオンチェーン事業を立ち上げられる可能性があるとしている。

さらに、AI生成コンテンツの拡大を背景に、Proof of Humanity(人間性の証明)の重要性にも言及。生体認証や暗号署名、オープンな開発標準を組み合わせた新たなデジタル認証基盤の必要性が示された。

コインベース・ベンチャーズは今回の発表について、2026年に向けて実際に資本を投下していく分野の方向性を示すものとして位置づけている。Web3、RWA、DeFi、AI、ロボティクスといった分野を横断する形で、次世代のオンチェーン経済を支えるプロジェクトへの投資を進める方針だとしている。

参考:発表
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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