伊銀行協会、デジタルユーロに賛成も高コスト懸念。民間デジタル通貨との併存求める

イタリア銀行協会がデジタルユーロに賛成も高コスト懸念

イタリアの銀行は欧州中央銀行(ECB)が進める「デジタルユーロ」プロジェクトを支持しているが、その導入に向けて銀行側が必要とする投資負担について、高コストであることから時間をかけて段階的に行えるよう求めていると、イタリア銀行協会(ABI)の幹部が述べた。

ECBは、ユーロ圏の通貨主権強化を目的に「デジタルユーロ(中央銀行デジタル通貨:CBDC)」の検討を進めている。しかし、特にフランスやドイツの一部銀行からは反対の声もあり、立法プロセスは遅れている。反対派は、何百万人もの欧州市民が日常決済にECBのオンラインウォレットを利用するようになれば、銀行預金が流出しかねないと懸念している。

ABIのマルコ・エリオ・ロッティニ(Marco Elio Rottigni)事務総長は、11月7日にフィレンツェで開かれた報道関係者向けセミナーで「デジタルユーロには賛成だ。なぜならそれはデジタル主権の考え方を体現しているからだ」と述べた。

一方でロッティニ氏は「しかしプロジェクトにかかるコストは、銀行が負担しなければならない設備投資全体の中で見ても非常に大きい。したがって時間をかけて分散させるべきだ」とし、費用負担の平準化を求めた。

ECBの構想は、経済のデジタル化が進む中で中央銀行マネーへのアクセス性と重要性を維持しつつ、非欧州系決済サービス事業者への依存を減らし、あわせて「ステーブルコイン」の台頭に対応することを狙いとしている。

ECB理事会は10月29〜30日にフィレンツェで開催した会合において、2年間の準備期間を終えたデジタルユーロ計画を次のフェーズへ進めることを決定した。

現時点の計画では、EU法が2026年に採択されることを前提に、2027年にパイロットフェーズを開始し、2029年の正式導入が予定されている。

欧州議会では、スペインの国民党(Partido Popular)所属のフェルナンド・ナバレテ(Fernando Navarrete)氏がデジタルユーロに関する審査を主導している。ナバレテ氏は10月28日に公表した報告書案で、「ウェロ(Wero)」など14行が支える民間決済イニシアチブを保護するため、スキームの規模を縮小した形での導入を提案した。

ロッティニ氏は「私たちは2本立てのアプローチを支持する。すなわち中央銀行デジタル通貨としてのデジタルユーロと、それより速いペースで発展し得る商業銀行デジタル通貨の双方を進めるべきだ。欧州が遅れをとるわけにはいかない」と強調した。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Italy’s banks back digital euro, want costs spread over time
(Reporting by Valentina Za; Editing by Susan Fenton)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:iStocks/Ninja-Studio・PIXTA

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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