ウィンクルボス兄弟の米ジェミナイ、IPO申請で収益減少と損失拡大を明らかに

ジェミナイがIPO目論見書を公開

米暗号資産(仮想通貨)取引所ジェミナイ(Gemini)の収益は2025年上半期に減少し、損失は拡大したと、同社は米国での新規株式公開(IPO)目論見書で明らかにした。ジェミナイは、公募市場の活用を目指す暗号資産関連企業の波に加わる形だ。

なお公募の条件は、8月15日に公開された提出書類の中では開示されなかった。

同社は6月30日までの6か月間について、総収益6,860万ドル(約101億円)に対し、最終損失2億8,250万ドル(約416億円)を計上したと報告した。前年同期は、総収益7,430万ドル(現在のレートで約110億円)に対して最終損失4,140万ドル(現在のレートで約61億円)だった。

米国でのIPO活動は、年初に通商政策変更を巡る不確実性で減速した後、ここ数か月で回復しており、いくつかの新規上場は投資家から強い需要を集めている。

直近数か月のIPO市場では暗号資産企業の存在感も大きく、ステーブルコイン発行体のサークル(Circle Internet Financial)や暗号資産取引所ブリッシュ(Bullish)の大型上場が続いた。

ブリッシュは13日の上場で、コインベース・グローバル(Coinbase Global)に次ぐ米国で2社目の上場暗号資産取引所となった(原文ママ)。ジェミナイが上場すれば、暗号資産取引所として3社目の上場企業になる(原文ママ)。※米国で2社目の暗号資産取引所は、日本で暗号資産(仮想通貨)取引所を運営するコインチェックの親会社コインチェックグループ(Coincheck Group N.V.:CCG)である。

「投資家にとってのジェミナイの論点は、トレーディングとカストディの事業ミックスと“競争優位性、信頼性と成長性における差別化要因、、そしてコインベースが真似できない何をしているのか、に集約される」と、ランニング・ポイント・キャピタル(Running Point Capital)のパートナー兼CIOであるマイケル・アシュリー・シュルマン(Michael Ashley Schulman)氏は述べた。

ジェミナイは、IPOによる調達資金を一般的な企業目的に充てるほか、第三者からの借入金の全額または一部の返済に用いるとした。

同取引所はまた、プラットフォーム上でステーブルコインにも対応している。先月にステーブルコインの規制枠組みを定める新たな米国法「ジーニアス法(GENIUS Act)」が署名されたことを受け、この分野への関心が高まっている。

ジェミナイは、米ドルに1対1で連動するステーブルコイン「ジェミナイドル(Gemini Dollar:GUSD)」を発行している。

同社はまた、60か国以上で事業を展開し、70種超の暗号資産をサポートしており、6月に非公開でIPOを申請していた。

2014年に億万長者の双子、タイラー・ウィンクルボス(Tyler Winklevoss)氏とキャメロン・ウィンクルボス(Cameron Winklevoss)氏によって創業されたジェミナイは、ティッカー「GEMI」でナスダック(Nasdaq)に上場する計画だ。主幹事はゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)とシティグループ(Citigroup)が務める。

ウィンクルボス兄弟は、フェイスブック(Facebook)および同社CEOのマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏に対して、ソーシャルネットワークのアイデアを盗用されたとして訴訟を起こしたことで注目を集めた。彼らは2008年に現金とフェイスブック株の受取によって和解している。

規制による追い風

ドナルド・トランプ(Donald Trump)米政権下での規制の明確化、機関投資家の採用拡大、ETF(上場投資信託)への資金流入の増加は、投資家の信頼を高め、暗号資産を主流金融に組み込むことに寄与してきた。

業界にとって画期的な出来事として、年初にはコインベースがブロックチェーン関連企業として初めてS&P500に採用された。ビットコイン購入機能を提供するブロック(Block)は7月に同指数へ採用された。

こうした変化は、世界中で10年以上にわたり厳しい規制監視にさらされてきた業界にとっての転換点を示す。 ・「(暗号資産の分野は)投機から持続可能性へのシフトが見られる。機関投資家は、実在の顧客、規制されたプロダクト、長期的な市場アラインメントといった証拠を求めている。これがセクターの成熟であり、株式上場を目指す他の暗号資産企業にも道筋をつけるだろう」と、暗号資産企業ズモ(Zumo)の創業者ニック・ジョーンズ(Nick Jones)氏は述べた。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Winklevoss twins’ Gemini reveals lower revenue and wider loss in US IPO filing (Reporting by Pritam Biswas in Bengaluru; Editing by Tasim Zahid)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

合わせて読みたい記事

カルシ、米国向けにセイネイティブの「SEI」と「USDC」入出金に対応

米予測市場プラットフォームのカルシ(Kalshi)で、レイヤー1ブロックチェーン「セイ(Sei)」のネイティブトークンSEIおよび同ネットワーク上の米ドル建てステーブルコインUSDCの入出金が可能になり、同資産を用いたイベント契約取引の資金移動ができるようになった。Xより12月3日に発表されている

シタデル・セキュリティーズ、トークン化証券とDeFiに取引所・証券会社規制の適用を提言。業界側から反発の声も

米大手マーケットメイカーのシタデル・セキュリティーズ(Citadel Securities)が、トークン化された米国株式を取り扱うDeFi(分散型金融)プロトコルに対しても、取引所およびブローカー・ディーラーとしての規制を適用すべきだとする意見書を米証券取引委員会(SEC)に12月2日に提出した