米決済ストライプ、暗号資産VCパラダイムと共同で「Tempo」ブロックチェーン構築へ

ストライプがパラダイムと共同でL1チェーン構築へ

米決済大手のストライプ(Stripe)が新たなブロックチェーン「テンポ(Tempo)」を開発していることが、暗号資産(仮想通貨)業界のロビー団体ブロックチェーン・アソシエーション(Blockchain Association)のサイトに最近掲載された求人情報で明らかになった。

8月3日付のプロダクトマーケティング職の求人広告には、「Tempoは高性能で決済に特化したブロックチェーンだ」と記されている。募集要項によれば、Tempoは現在ステルス段階にあり、チームは5人、パラダイム(Paradigm)と提携して構築されているという。なおパラダイムの共同創業者兼マネージングパートナーであるマット・ホワン(Matt Huang)氏は、ストライプの取締役でもある。応募者は「フォーチュン500企業向けのマーケティング経験」を有していることが望ましいとされている。

関係者4人の説明によれば、このブロックチェーンはレイヤー1(他のプロトコル上に構築されていない)であり、イーサリアム(Ethereum)で用いられるプログラミング言語との互換性(EVM互換)があるという。いずれの関係者も、非公開の事業会話について話すため匿名を条件とした。またストライプおよびパラダイムの広報担当者は、この件についてコメントを拒否した。米経済誌「フォーチュン(Fortune)」が両社に問い合わせした後、この求人情報は取り下げられた。

Tempoはストライプによる暗号資産分野での最新の投資である。同社は「オンラインでの簡易チェックアウト」や「企業向けの請求書自動化」などの決済プロダクトを背景に、企業評価額を約920億ドル(約13.6兆円)まで伸ばしてきた。ストライプは10月にステーブルコイン基盤インフラ企業ブリッジ(Bridge)を11億ドル(約1,632億円)で買収すると発表。これは同社史上最大の買収となった。さらに6月には、暗号資産ウォレット開発企業プリヴィー(Privy)を買収した(買収額は非公開)。

ストライプのこうした暗号資産企業の買収ラッシュは、米ドルなどの基軸資産に連動するステーブルコインへの関心の急拡大の中で起きている。支持者は、ステーブルコインがSWIFTや電信送金といった従来の金融インフラよりも効率的な決済技術であり、国際送金コストや各種手数料を引き下げるなどの利点があると主張している。

ステーブルコイン自体は10年以上前から存在するが、特に7月にドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領がGENIUS法(GENIUS Act)に署名して以降、この技術への関心はこの1年で一段と高まっている。同法は、この成長著しい分野に対する連邦レベルでの規制指針とルールを示すものだ。決済の世界ではメタ(Meta)、アップル(Apple)、エアビーアンドビー(Airbnb)といったビッグテックでさえステーブルコイン統合を模索しているが、その先頭に立っているのはストライプだ。

ストライプの創業者兼CEO、パトリック・コリソン(Patrick Collison)氏は3月の米下院での証言で「基盤技術の成熟に伴い、ステーブルコインに対する実質的なビジネス需要が生まれてきた」と述べている。

ブリッジの買収により、ストライプは企業が自社の決済フローにステーブルコインを統合し、さらにはステーブルコインを自社発行することを支援するプラットフォームの所有権も獲得した。またプリヴィーの買収により、顧客が保有資産を管理するための暗号資産ウォレットを構築する力も得た。新たなブロックチェーンは、ステーブルコイン取引を処理するサーバーというステーブルコインの技術スタックのもう一つのレイヤーを同社が掌握することを可能にする。

なおストライプは、ブロックチェーンを構築する理由を公表していない。また、同プロトコルを支えるための暗号資産(トークン)を発行する意向についても明らかにしていない。

※この記事は「あたらしい経済」がロイター経由でフォーチュンからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Exclusive: Fintech giant Stripe building ‘Tempo’ blockchain with crypto VC Paradigm
(Reporting By Ben Weiss, Leo Schwartz)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Fortune via Reuters Connect(ストライプの創業者兼CEOパトリック・コリソン氏

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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